【横塚裕志コラム】UNLOCKすることで 隠れていた大きなマーケットが見えてくる ~「ライフプレナー」という生き方~

私たちは、いま時点の社会の常識のなかで生きている。ただ、この常識はある意味偏っている。例えば、今でも「男性中心社会」という常識が蔓延している。だから、この常識を脱ぎ捨てることができれば、今まで見えなかったことが「問題」として認識でき、そこに問題を解決する新しいマーケットが出現する。その典型的な事例を知ったのでご紹介したい。

1.「ライフプレナー」という生き方

IMDから定期的にいただいている情報に、以下の取り組みが紹介されていた。皆さんと共有するために、ソフトで翻訳した文章を掲載する。

ヴァニーナ・ファーバー(経営学者)の記事では、「デフォルト」という概念と、それに対してどのように「ライフプレナー」がアクションを起こしているかが説明されています。
「デフォルト」とは、一般的に多くの社会的システム(例えば、金融システム、キャリア、公共の安全など)が設計されたときに、特定の「典型的な」人生経験を前提としていることを指します。これらのシステムは、しばしば男性や特権的な立場の人々の視点から作られており、そのために女性やマイノリティの人々が直面する独自の問題や課題が反映されていません。
例えば、以下のような問題が「デフォルト」に含まれます:
  • キャリアの中断:特に女性は育児や介護のためにキャリアが一時的に中断されることが多いが、伝統的なキャリアシステムはこれを考慮していません。
  • 男女間の賃金格差:男性と女性の賃金の違いは、しばしばシステムに内在する偏見やデフォルトに起因します。
  • 安全に関する問題:特に女性は職場や公共の場での安全面で特別な懸念を抱えている場合が多いですが、システムはしばしばこの点を無視します。

これらの「デフォルト」が社会で一般的に受け入れられた「標準的な考え方」に基づいているため、多くのシステムは女性や非特権層のニーズに応じた調整がされていないのです。
ライフプレナーとは、このような不公平な「デフォルト」に挑戦し、それを変えるために活動している起業家やリーダーたちのことを指します。ライフプレナーは、自身の経験や観察を通じて、システムが持っている問題点や欠陥を認識し、それを改善するための革新的で市場に適応した解決策を開発しています。
具体的な例として:

  • サリー・クローウィック:女性に向けた典型的な金融アドバイスが役立たないことに気づき、女性専用の投資プラットフォーム「エルヴェスト」を立ち上げました。これは、女性が直面する経済的課題やライフイベント(例えば、育児休業やキャリア中断など)に配慮した投資サービスです。
  • キャロル・フィッシュマン・コーエン:多くの企業がキャリアのブランクを持つ人々を不利に扱っていることに反対し、リターンシップ(職場復帰プログラム)を導入した「iRelaunch」を設立しました。これにより、長期間のキャリア中断後に職場復帰を目指す人々が再び働きやすくなりました。

ライフプレナーは、既存の「デフォルト」がすべての人々に平等でないことに気づき、それをより包括的で公平なシステムに変えるために行動を起こしています。

2.UNLOCKの破壊力

不公平、非合理な常識、標準に気がつくことの凄まじい破壊力を目にした感じだ。確かに言われてみれば、男性中心の常識や健康な人の常識で世の中が動いていることに気がつかされる。
私自身も、コロナで満員電車通勤の問題に気がつかされたり、息子家族からの相談で小学1年生の壁などを初めて知った。友人が、長期療養で退職せざるを得なかった方の復帰をサポートするNPOを立ち上げているが、社会には数多くの課題が山積している。そして、それは行政や政治では解決できていない。

つまり、常識を脱ぎ捨てることができれば、新規事業のマーケットが見えてくるのだろう。常識を脱ぎ捨てること自体がひどく難しいのだが。

3.「ライフプレナー」二人の経歴(ChatGPTで調べました)

サリー・クローウィックは、ゴールドマン・サックスでキャリアをスタートし、同社で経済アナリストとして活躍していました。その後、同社の株式部門の責任者となり、エクイティリサーチ部門のリーダーとしても名を馳せました。
その後、メリルリンチに転職し、最高投資責任者(CIO)として、同社の資産運用部門を指揮しました。この時期に彼女は、投資家としても名声を得ることとなり、金融業界での重要な人物となりました。

キャロル・フィッシュマン・コーエンは、ハーバード大学で経済学の学位を取得し、その後、ウォール・ストリートの大手企業で投資銀行家として働いていました。しかし、家族の事情で一度キャリアを中断し、家庭生活に専念することになります。
数年後、再びキャリアに復帰することを決意し、その経験が彼女の現在の仕事に繋がりました。彼女は自らの経験をもとに、キャリアの中断後に復帰したい人々に対する支援を行うようになりました。

4.二人の共通性

起業されたお二人に共通するエンジンが二つあるように思う。

  1. その分野における「高度な専門性」をお持ちになっているということ。その分野の専門性がなければ、新規事業を立ち上げることはできないという証ではないだろうか。ふと気がついたくらいではだめで、高度な専門性に基づいた周到なビジネス企画の準備活動が必要なのだと推測する。
  2. 自分が経験した社会問題に挑戦している姿も共通している。自分がおかれた不公平や不遇を社会問題として抽象化し、新しいマーケットを作り出している。自分ごとの強さとそれを社会問題として抽象化できる能力が重なっての成功なのだろうと感じる。

自分をUNLOCKすること、そして問題を抽象化してビジネスに仕立て上げる能力。 この二つがなければ、起業などできないのだろう。常識の塊みたいな人が新規事業コンテストなどやってみたところで深い探索などできないのだろう。

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