【横塚裕志コラム】世界のIMDが なぜ名もないNPO・CeFILと提携しているのか

私たちCeFILは、大変光栄なことに、世界有数のビジネススクールであるIMDと提携させていただいている。おかげで、DXで世界的に著名なMichael Wade 教授はじめ、多くの教授陣とメンバーの皆さんとの議論の場をつくることができている。また、学長にも毎年のようにお越しいただき、メンバーの経営陣との会談の場も設け、貴重なアドバイスをいただいている。
これだけの学びの機会をいただけているのは、前IMD北東アジア代表・高津尚志氏のご努力によるところが大きく、この場を借りて深くお礼を申し上げたい。
深い感謝を込めながら、提携いただいている理由を考えてみる。

1.CeFILの属性

私たちCeFILは、NPOという属性の団体である。NPOは日本語では「特定非営利活動法人」と呼ばれる。内閣府のホームページには次のように定義されている。

「NPOとは『Non-Profit Organization』または『Not-for-Profit Organization』の略称で、様々な社会貢献活動を行い、団体の構成員に収益を分配することを目的としない団体の総称である。
したがって、収益事業を行うこと自体は認められるが、その収益は社会貢献活動に充てられる。
NPOは法人格の有無を問わず、福祉、教育・文化、まちづくり、環境、国際協力など多様な分野で、社会の多様化したニーズに応える重要な役割を果たすことが期待されている。」

つまり、NPOとは「利益を分配しない組織」であり、「利益を上げてはならない組織」ではない。

2.日本人のNPOに対する感覚

大企業の役員に「私はリタイア後、NPOで活動している」と挨拶すると、たいてい次のような反応になる。
「それは大変ですね。ご苦労さまです。」
どこか、地域のボランティア活動をしている人を見るような眼差しだ。大企業が本気で向き合う対象ではない、という前提が空気として漂う。
日本では、NPOは「ボランティア団体」「無償の善意活動」とほぼ同義で理解されているように思える。その認識が、対話をそこで止めてしまう。

3.IMDの私たちに対する感覚

DBIC設立の1年前、2015年にスイス・ローザンヌの IMD を訪問した。
当時設立されたばかりの「Global Center for Digital Business Transformation」の所長、Michael Wade 教授に面会することができた。
共同代表の西野氏がこう伝えた。
「日本企業は世界レベルのデジタル・トランスフォーメーションを十分に理解できていない。世界にキャッチアップするための活動を行うNPOを立ち上げたい。ご支援いただけないだろうか。」
20分ほど話を聞いた後、Wade教授は即答した。
「Yes. NPOを立ち上げたら、具体的な内容を相談しよう。」
まだ団体すら存在していない。実績もない。どこの誰かも分からない日本人二人の構想に対して、なぜ即答できたのか。
本人に直接確認したことはない。しかし、その後の対話を通じて感じたことは次の二点である。

  1. 世界レベルの教育機関は、「相手が誰か」よりも「社会的意義があるか」「新しい価値を生む可能性があるか」を基準に判断している。日本企業の停滞を心配している、という言葉が強く印象に残っている。
  2. NPOやNGOを「社会変革を担う専門的存在」として認識している。NPOにもプロフェッショナリズムを求め、政府・企業・NPOの三者協働が文化として根付いている。

ここには、日本との認識の差がある。

4.ヨーロッパにおけるNPOの位置づけ

ヨーロッパでは歴史的に市民運動が社会の重要な構成要素となってきた。その流れの中で、NPOは制度的にも社会的にも「公共の担い手」として位置づけられている。
それは単なる補助的存在ではない。

  • 民主主義の構成要素
  • 政策形成のパートナー
  • 社会課題のイノベーター

として制度に組み込まれている。
日本との違いはここにある。
Wade教授も、私たちのNPOをその延長線上で理解していたのだと思う。

5.第3極の価値観が、日本に必要ではないか

日本の社会制度は、「政府・自治体」と「企業」という二極で構築されている。
政府は産業政策や行政論理で動き、企業は利益追求の論理で動く。その結果、解決されない課題が積み上がっている。
今こそ、「正しい社会制度への変革」を志向する市民目線の第3極が必要ではないか。
政府や企業と対等に意見を述べられる存在があれば、課題解決の質は変わるはずだ。

  1. 市場と企業の間にある課題
    企業は利益を前提に動く。そのため、社会的に重要でも不採算な分野には構造的に取り組みにくい。NPOは「市場の失敗」が生じている領域で、本質的なアプローチを取ることができる。
    例えば、メディアは「正しさ」よりも「売れるかどうか」で情報を選別する。
    その結果、世界の知見が日本に十分入ってこない。
    欧米で話題のビジネス書が翻訳されない一方、韓国では積極的に翻訳され書店に並ぶ。 これは市場原理だけでは補完できない領域である。
  2. 人材と企業の間にある課題
    企業では即戦力や成果主義が重視される。すべての人がそのスピードに適応できるわけではない。
    障がい者雇用、出産・育児期の就労支援、ニートや引きこもり経験者の社会復帰支援、長期病欠者の復帰支援など、政府と企業だけでは十分に対応できない課題がある。
    NPOは長期的視点で人を支えることができる。
  3. 政府と企業の間に立つ意味
    IMDのような教育機関は、その性格上、特定の営利企業と深く提携することは難しい。かといって政府機関とも距離を取らざるを得ない場合がある。その中間にNPOが存在することで、より公共性の高い形で知見を広げることが可能になる。
    例えば、国民の医療データを匿名化して活用する制度設計が議論されている。
    そのデータを営利企業が保有するのか、公共目的のNPOが管理するのかで、社会の信頼感は大きく変わるだろう。

NPOとは、善意の集まりではない。
社会の構造に風穴を開ける存在だ。
NPOという第3極で、日本の課題に挑戦してみてはどうだろうか。

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