【横塚裕志コラム】IT化は取り組めても「デジタル化」ができない日本企業 その⑥

今回は、「ビジネスアナリスト(BA)」というプロ人材が2000年代から急に必要になってきた理由について、あらためて考えてみたい。

Ⅰ. 専門人材が必要になった理由

日本企業は、今まで、自社の商品に関する専門知識、自社の販売チャネルに関する専門知識などを、先輩から習得することで成功してきた。しかし、今、ビジネスアナリストとかCXデザイナーとか、社内にはないスキルを持つプロ人材が必要となってきた。その理由は何か。

  1. デジタル化とテクノロジーの進化
    デジタル化が進む中で、「先輩から学ぶ」だけでは、技術や市場の急速な変化についていけなくなり、専門的なスキルを持った人材が必要となった。
  2. グローバル化と市場競争の激化
    日本市場の競争だけでなく、世界中の企業と競争しなければならない状況が進んでいる。特に、新興市場やオンライン市場が拡大している中で、現地のニーズに迅速に対応し、国際的な視点で戦略を立てることが求められている。
  3. 顧客の期待の変化
    消費者のニーズが多様化し、ますます個別化されている。消費者は単に商品を購入するのではなく、体験やサービスに対しても高い価値を求めるようになっている。これにより、企業は製品中心の論理ではなく、顧客中心のアプローチを強化する必要があり、顧客価値の専門性が必要となっている。
  4. 迅速な意思決定と柔軟性
    市場環境や顧客のニーズは日々変化している。従来の「先輩から学ぶ」形の教育や経験の積み重ねでは、変化に迅速に対応することが難しくなっている。企業が変化に柔軟に対応していかないと大企業でもすぐに業績が悪化してしまう。
  5. イノベーションと創造性の必要性
    単に既存の商品を販売するだけでなく、新しい価値やイノベーションを創出するためには、技術的な専門知識や市場調査を基にした深い洞察が欠かせない。それを実現するためには、社内の知識やスキルだけでは立ち行かなくなっている。

Ⅱ. 専門業務は外部に委託する経営の限界

日本企業は、自前ではゼネラリストを抱え、専門職は社外の企業に委託するという経営でやってきた。しかし、これでは限界となり、社内に専門職を持たなければならなくなった。その理由は何か。

  1. 市場の変化と競争の激化
    外部の企業に委託している場合、外部と社内でのコミュニケーションのタイムラグや理解のズレが生じることが多く、迅速な対応が難しくなる。社内に専門職を持つことで、リアルタイムで情報を共有し、意思決定のスピードを加速させる。
  2. 技術革新とデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速
    ビジネスとデジタル双方に強い専門職でなければ、DXの企画はできない。ビジネス側の人が少しデジタルを学んだくらいでは、改善はできても改革はできない。デジタルを外部に委託する企業が多いが、それでは深い企画ができない。
  3. 専門性の深化と高度化
    外部の専門家では、短期間のプロジェクトにおいて有益な支援をしても、本質的で長期的な課題に対応することが難しい。
  4. 組織内での知識の蓄積と継承
    外部の専門家に依存している場合、ノウハウや知識の社内での蓄積が進みにくい。これにより、企業の競争力が外部に依存する形になり、長期的な視点での成長が難しくなる。
  5. 外部委託のコストとリスク
    外部の専門家に委託する場合、高額な費用が発生することがある。長期的に見ると自社内に専門職を抱えた方がコスト効率が良くなる。
    また、外部委託では、機密情報や企業の独自の戦略に関してリスクが伴う。

Ⅲ. BA以外のプロ人材も必要ではないか

1.「人材育成」のプロ人材が必要ではないか
日本でも、人材育成部門には人材育成のプロ人材が必要ではないかと言われ始めている。欧米の企業では、人材育成部門は脳科学や心理学の専門家が働くのは当たり前のようだが、日本はまだゼネラリストが配置されている。人材育成のプロ人材が必要な理由は以下のようなことだと考える。

① 企業の競争力強化
企業の競争力の根源は人材の質だということは明らかだ。企業のビジネス戦略に合わせた組織能力のポートフォリオを企画し、必要となるケイパビリティを持つ人材育成に取り組むことが戦略のキーとなる。そこに専門家を配置するのは必然だ。
② 雇用制度の大きな転換点
若者を中心に、終身雇用から転職の文化に日本も変化しようとしている。加えて、人手不足により人材獲得競争が激しくなっている。この大きな転換点に立つ日本企業として、新時代の人材育成戦略を自ら描くことが焦眉の急となっている。
③ 成功体験の呪縛から脱皮する時期
過去の成功体験だけでは、激しい競争には勝てない。社内に積み重ねてきた知識やノウハウだけに頼るのではなく、競争力を構成する多くのケイパビリティをレビューし、不足している部分をいかに育成するかが重要だ。

人材育成のプロ人材が日本企業にも必要な理由は以上通りだ。この「人材育成のプロ人材」を育成することは、DBICでLXの一つの要素として2025年度以降活動していくつもりだ。

2.他にも必要としている別のプロ人材があるのではないか
欧米では、サプライチェーンの構築とか、経理業務とか、多くの部門にプロ人材を配置している。最近は、サステナビリティの視点でのプロ人材の話も聞く。ゼネラリストの育成という一本足打法ではなく、プロ人材の育成・配置を含めた「人的資本経営」を考えるべき時が来ているのではないだろうか。

次回は、BAの仕事と密接なかかわりがある「ビジネスプロセス」という考え方について考えてみる。

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