【横塚裕志コラム】組織OSは、人の頭の使い方まで変えてしまう

先日、IMDで日本人二人目の教授に就任された藤川教授の講義をLX Hubでうかがう機会を得た。藤川教授は一橋のICSでの教授経験が長く、日欧のビジネススクールで教えている経験から、興味深い話をうかがった。
参加者の満足度を左右する要因が、日本と欧州のビジネススクールでは大きく異なるという。欧州では、「参加者がどれだけ話せたか」が満足度を左右する。一方、日本では、「先生がどれだけ話してくれたか」が満足度につながるというのだ。
私は、この違いは単なる文化の違いではないように思った。以下は、私が考えた仮説だ。

1.何を学びに来ているのか

欧州の参加者は、自分が会社で取り組んでいるテーマや、解決したい課題を持って教室に来る。だから、「この考え方は自分のテーマにどう使えるだろうか」という視点で授業を聞く。自然に質問が生まれ、自分の考えを話し、他の参加者と議論したくなる。 一方、日本では、「先生から新しい知識を教えてもらう」という姿勢で参加する人が多い。もちろん例外はあるが、全体として見れば、「教えてもらうこと」が学びになっているように感じる。 この違いは、なぜ生まれるのだろうか。

2.違いを生み出しているのは、組織のOSではないか

私は、その背景には、日本企業が長年使ってきた「管理OS」と、欧米企業に多く見られる「マネジメントOS」の違いがあるのではないかと考えた。

管理OSでは、日々の仕事は、決められた業務を正しく行い、ミスを減らし、改善を積み重ねる、ことが中心になる。考える対象は、常に「今ある仕事」だ。
もちろん改善テーマはある。しかし、それは現在の業務をより効率的に、より正確にするためのテーマだ。

一方、マネジメントOSでは、仕事は「顧客成果を定義すること」から始まる。
顧客にどのような成果をもたらしたいのか。会社として何を実現したいのか。新しい価値をどのように生み出すのか。まずテーマを決め、そのテーマを実現する方法を考え続ける。
つまり、仕事そのものが、「テーマを追いかける活動」になるのだ。

3.組織OSは、人の頭の使い方まで変えてしまう

この違いは、単に仕事の進め方の違いではない。
人の頭の使い方まで変えてしまう。管理OSでは、「今日は何を改善しようか」という思考になる。マネジメントOSでは、「このテーマを実現するには、何を学び、何を変えるべきか」という思考になる。
つまり、テーマ → 問い → 学び → 実践 → 新たな問い、という循環が自然に生まれる。
ビジネススクールでも同じだ。
テーマを持っている人は、「この理論を自分の課題にどう応用できるだろう」と考える。だから議論したくなる。
テーマを持っていない人は、「今日は何を教えてもらえるのだろう」と考える。
だから先生の話を聞くことが満足につながる。
学び方の違いは、実は仕事で使っている組織OSの違いなのではないだろうか。

4.「学び続ける人」は育てられるのか

最近、多くの企業が「自律的に学び続ける人材」を求めている。
しかし、管理OSのまま、「もっと学べ」「もっと主体的になれ」と言っても、それは仕事の構造上、無理なのかもしれない。
人は、テーマがあるから学ぶ。そして、そのテーマを持ち続ける習慣は、仕事の中で形成される。マネジメントOSでは、成果を定義することから仕事が始まる。
だから、社員は常にテーマを持ち続けることになる。
そのテーマを実現するために学び、人と議論し、挑戦し、また学ぶ。

学び続ける人材は、研修では育たないだろう。仕事のOSが、その人の思考をつくるのだ。私は、これから企業が考えるべき人材育成とは、「何を教えるか」ではなく、「どのようなOSで仕事をさせるか」というテーマなのだと思う。

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