前半のセッションでは「ブロックチェーンは情報革命を起こすのか 〜分散型台帳技術のユースケースと将来の可能性〜」と題し、株式会社ソラミツ取締役COOの宮沢和正様にご登壇いただきました。 宮沢和正様 ソラミツが中心に開発したブロックチェーン「いろは(Iroha)」は、2016年、Linux Foundationのオープン・ソース「Hyperledgerプロジェクト」において、180社以上の参加者の中からIBM等のFabric、IntelのSawtooth Lakeに続いて世界で3番目に受諾されたシステムです。FabricがB2B、IntelがIoTに最適化しているのに対して、IrohaはB2Cを得意としています。 ブロックチェーンには管理主体の有無で「パブリック型」および「コンソーシアム・プライベート型」に分類されます。パブリック型の代表格はビットコインを中心とした仮想通貨で、誰でも参加できる代わりにトランザクションが10分程度かかってしまったり、ファイナリティ(決済の確定)がなかったり、といった短所も。一方、コンソーシアム・プライベート型であるIrohaは国家や企業など参加者を限定する代わりに、数秒でのトランザクションやファイナリティを確保しています。 この特徴を活かし、Irohaはカンボジア国立銀行と共にインフラとなる金融システムを共同開発しています。国立銀行という運営主体を持ちつつ、国家運営に模した三権分立の考えを取り入れ、相互監視させることで運営の暴走を防ぐ仕組みが特徴です。他にも、利用者保護やプライバシーへの配慮といった、パブリック型では難しかったチューニングを行っています。 ソニーに在籍していた宮沢様はEdyなどの電子マネーに関わった際、カードや専用端末の導入コストが普及のハードルになることを経験されました。一方、ソラミツが2017年3月から会津大学で実証実験に取り組んでいる学内通貨「白虎」では、店舗側もユーザーもスマートフォンまたはタブレットだけで導入することが可能で、ソラミツが把握していないところで加入店舗が増える、という点がブロックチェーンを活用した地域通貨における発見だったとのことです。 横塚裕志からの「どうやったらDBICメンバー企業が、ブロックチェーンを活用した新規ビジネスを生み出していけるのか?」という質問に対しても、宮沢様は「ブロックチェーンは万能ではない。まずは実証実験を通して実際に体験し、課題を見つけることが重要」だと答えていました。 横塚裕志
後半は株式会社オルトプラス執行役員CTO嶋田健作様による「社内仮想通貨 "JOY" による新しいコミュニケーションと通貨の可能性」と題したセッションです。 嶋田健作様 オルトプラスでは、まさに仮想通貨の「実証実験」を、社内外で実施しています。ゲーム開発会社らしく、「定時出社するとコインがもらえる」といったゲーミフィケーションにより社員に対して推奨行動の習慣化やモチベーション付与を行っているとのことです。 他にも会社のプレスリリースを社員がSNSでシェアした場合、社外のカンファレンスやセミナーの情報を社内に共有するなど、ちょっとした貢献が可視化され、福利厚生としてのインセンティブと組み合わさることで、社内にエコシステムが形成されていきます。 社内だけに留まらず、オルトプラスが利用している宅配弁当店や周囲の飲食店とも仮想通貨「JOY」を通した提携を進めています。例えば弁当店に対しては、キャッシュレス化や予約制による需要予測データの提供というベネフィットを提供しています。 社内仮想通貨の活用が増えることで人事部や総務部などの管理部門の仕事量が増えてしまう対策としては、勤怠システムとのAPI連携や、Slack/Chatworkとの接続による自動化を進めることで改善。このようにオルトプラスは社内仮想通貨を通してブロックチェーンを社内外で実証実験することで、企業が自社の仮想通貨を簡単にリリースできるようなプラットフォームサービスの構築を進めています。 ブロックチェーンや仮想通貨がテーマの今回のプログラムは大勢の皆様にご参加いただき、大盛況となりました。金融や保険業界など、DBICメンバー企業ならではの質問も多く出て、インタラクティブなセッションとなりました。
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