【レポート】横塚裕志が聞きたいシリーズ第13回:AIでビジネスインパクトを出すための方法論 ~ビジネスとデータの橋渡し役に求められる思考法~

「データサイエンス」という言葉が日本で話題になったのは2012年のことです。様々な企業がデータ分析に取り組み、データサイエンティストを採用・育成しましたが、なかなかビジネスに成果を出せずに悩んでいる企業が多いのも事実です。 しかし話題のAIを活用するためにもデータ分析は必要であり、改めてデータサイエンスが注目されています。なぜ企業でデータ分析が進まないのか。それはデータ分析の目的である「分析課題」を明確にできていないためだと講師の堅田様は指摘されます。 株式会社データミックス 代表取締役 堅田洋資様 ビジネスの課題は「売り上げを上げたい」「顧客を増やしたい」といった抽象的なものです。一方でデータは具体的な数値そのものであり、お互いが噛み合わないことが当然です。 またデータサイエンティストを外部から採用するだけではデータ分析は進みません。ビジネス部門とデータ分析部門の間にコミュニケーションギャップがあるため、お互いの部門を橋渡しする「翻訳家」の役割を持った人材が必要です。みなさんにはこの翻訳者になって欲しい、と堅田様は参加者に訴えます。 事例として挙げられたのは「マネーボール」という映画です。オークランドアスレチックスというアメリカの球団を題材にしたこの映画は、データ分析で球団の成績を改善するストーリーになっています。 最大のポイントは「強い球団を作る」という抽象的な課題を「予算内で出塁率を最大化する」という具体的な課題に再定義したことです。 課題を具体化することにより出塁率に関わるデータを明確に分析することができ、「高給で打率が良い選手より、安価でフォアボールを見切れる選手を採用する」といった意思決定がされ、球団の成績に影響を与えることができるようになりました。

ではどうすれば課題を明確にすることができるのか。まずビジネスの課題分析に有効な手法として「カスタマージャーニー」と「KPIツリー」が紹介されました。 カスタマージャーニーでは顧客の行動と心理変化を明確にしていきます。KPIツリーでは例えば「のべ来客数」を「来店人数×平均来店頻度」といった形で経営指標を細かく分析していきます。この際に自社が変えることができる指標=アクションが起こせる指標に分類していくことがポイントです。この作業でどこにどのような打ち手が考えられるかを特定していくことができます。 例えば顧客が来店するタイミングで、平均来店頻度を高めるにはどうすればよいのか。来店頻度を高めるためにポイントカードを活用するとすれば、どのような属性を持った顧客に対してポイントサービスを強化すればよいのか。 このように5W1Hで表現できるレベルにまで課題を具体化できるとデータ分析の出番になります。ビジネスの目的を具体化して「分析課題」を明確にすること。これがデータ分析には不可欠です。 しかし、この分析課題が明確にならない場合があります。それはデータ分析部門が現場や顧客を知らない場合です。顧客をよく観察し、顧客を理解しなければ課題を発見することはできません。 そしてその課題を解決するために分析したいこと=知りたいことが明確になっていきます。この「知りたいこと」こそがデータ分析に必要な「特徴量(≒説明変数)」になります。データ分析部門の代わりに翻訳家が常に顧客をよく観察し、この特徴量を意識しておく必要があります。 近年注目されているディープラーニングも魔法の杖ではありません。あくまで様々なデータ分析アルゴリズムの1つであり、活用するためにはビジネス課題の設定から特徴量の特定まで人間がする必要があります。 また機械学習の初期段階では人間がサポートすることも重要です。社内で分析課題を特定できる翻訳家を育て、データ分析のサイクルに何度もチャレンジすること、それがビジネスに成果を出すことになるでしょう。 そして堅田様の最後のメッセージは「とにかく小さくやってみること」でした。データ分析はやってみないと分からないことが多くあります。まずは人間がサポートしながら小さく始め、うまくいけば拡大していくこと、これが成功の秘訣とのことでした。 2019年度にはこのデータ分析思考にフォーカスした3ヵ月間のワークショップをDBICで開催する予定です。ご期待ください。

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