しかし、医療の専門家や政治家から出てくる言葉は、人員が足りていない、とか、目詰まりを起こしているとか、情緒的な発言が多く、解決の方向性は見えてこない。 また、一律10万円の特定定額給付金の請求方法も、「マイナンバーカードがあればオンライン請求可能」と言っていますが、実はそうではありません。マイナンバーカードのほかに、カードリーダーかカード読み取り可能なスマホが必要です。カードリーダーなど持つ人はごく少数で、政府やメディアの発信が実際のプロセスを考慮した発想になっていないことも気になります。
具体的な例を挙げましたが、要は「ビジネスプロセス」という考え方が日本の多くの組織の中に存在しないという、深刻な課題を感じざるを得ません。 東京海上日動での現役時代に、お客様からの苦情で最も多いのが、「毎年更新の保険で満期ぎりぎりに代理店が来る。1か月くらい余裕をもってきてほしい」というものでした。 ビジネスサイドの「緊張感が足りない。指導する。」という反応をみて、そうではなくてビジネスプロセスをよく分析してシステムの力を活用しながら仕組みで解決することを提案したことを思いだします。日本企業は、製造に関しては徹底した「カイゼン」努力が板についていますが、オフィスワークでの「カイゼン」が全く機能していません。「頑張り」以外の解決策を見いだす能力を組織としてどのように育成していくかが大きな課題です。
しかし、「ビジネスプロセス」を分析・改善、改革していく能力は、たぶん、そう簡単には育成できないのではないでしょうか。 先ほどのPCR検査の改善を例に考えてみると具体的な業務は以下のようになります。
ざっと考えても幅広い内容の検討が求められます。特徴的なのは、論理的なプロセス分析に加えて、全体としてどうありたいのか、どうやったら改革できるのか、といったビジョン、意思が強く求められることです。このビジョンがなければ、「現状でのリソースではこれが限界」とか「何とかよくやっている」という分析で終了してしまうことになります。 「ビジネスプロセス改革」は、「しっかりしたビジョン」「強い意志表明」がベースにあることがなんとしても重要だということを忘れてはなりません。
新型コロナの影響で、在宅勤務を中心にした「接触しない新しい仕事のやり方」を模索していく時代が来ました。まさに「ビジネスプロセスの改革」を行う時です。 単にオンラインで会議ができるとか、ハンコをデジタルに変えたとか、という個別の問題よりも、まずは、新しい仕事のビジョンを考えることが先決だと思います。このタイミングを、今までできなかったより理想に近い仕事とは何か、を考える機会にしてはどうでしょうか。 「オフィスワークの50%以上は組織内を向いた作業で、お客様にとって価値がある仕事の割合は50%未満」という研究を見たことがあります。通勤という価値がない作業を省略できる時代が新型コロナによって到来したと考えて、お客様にとり価値があるプロセスだけに専念できて、社内の調整用の作業は一切省略する理想的なプロセスを作ってみませんか。 それを熱く議論する過程が、人材を育成することにもつながるのではないでしょうか。DBICでも、そんな議論をしてみたいと思います。
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