【横塚裕志コラム】新型コロナ対策で感じる日本の弱点

近頃の日本の政治家・官僚のコロナ対策を見ていると、日本の弱点をいろいろと感じます。平時では気が付かないことが非常時でははっきり見えてきます。この弱点は、政治や行政の分野だけではなく、日本企業の分野でも感じられる弱点だと思いますので、記録しておくことにします。ここに記録するのはあくまで私見ですが、ポストコロナに向けての企業改革、ポストコロナを目指したDXなどを企画するうえで重要なヒントがここにあると考えます。

1. リーダーの劣化

リーダーが部下の作成した原稿を読むだけだから、政策の意図が伝わらない。国民の心からの賛同が得られない。自分の言葉で語れ、と周囲がやきもきするが、自分の「想い」がないので原稿だけが頼りとなっている。ビジョンを持たないリーダーは非常時には機能しない。

2. 「優秀」の定義が変わる

過去にとらわれない大胆さ、現行のルールに縛られない発想力、苦境に負けない粘り強さ、等々、先が見えないときの「優秀」は今までとは異なる要素になってくる。

3. 専門分野に経営がかかわることが必要

PCR検査を現状の4倍の2万件/1日目指す、と号令をかけてもなかなか実現しない。医療崩壊をできるだけ防ぐ、と叫んでも防護服さえ調達できない。希望を叫ぶだけでは仕事をしたことにならない。専門性の高い分野でも現状を可視化させ、ボトルネックを見極め、解決策を具体的に指示できるリーダーでないと役に立たない。ITも同様。うまく使えと号令しても意味がない。

4. いいものがあれば学ぶ謙虚な姿勢が欲しい

隣の韓国では、PCR検査を希望者にはすぐ受けられる体制を敷いたとか、台湾では、ITを活用した施策が功を奏したとか、スウェーデンでは・・・など参考にすべき情報があるにもかかわらず、日本が一番という錯覚のまま学ぼうとしない。プライドが邪魔して学べないようでは命は救えない。

5. 手続きが遅い

10万円/1人の給付金、4月中に国会で補正予算として決まると、スピード感を持って実施するので支払いは5月末スタートが可能だと。国会中から準備できるわけだから1か月は遅すぎる。手続きが遅い理由は多岐にわたると考えられる。俊敏な手続きを短時間でデザインできる人がいない、従来の紙ベース、人による二重チェック、週単位のバッチ型の処理しか頭にない、一番遅い自治体に合わせる公平感、など、原因はいろいろと想定できるが、平時にも必要な効率的なプロセス設計は、まさにDXの恰好なテーマだ。

6. 施策が中途半端

居酒屋は20時閉店、19時でお酒ストップ。なんと中途半端な施策。現場の意見を聞いて予定調和の歩み寄りという結論。これでは、命を守ろうという本来の目的には遠回りになる。現場の大きい声に妥協することがワンチームという幻想から早く脱却する必要がある。

7. 在宅勤務もどき

オンライン会議ができるだけでは、在宅で仕事はなかなかはかどらない。組織としての活動がうまく進まない、と感じている方が多い。もちろん、オンラインでの会議は有効だし、意外と移動時間がない分効果的な仕事ができる、という面はある。しかし、組織内のメンバーの持つ仕事がどのように進んでいるのかが可視化されておらず、在宅勤務の難しさを感じる。

8. レジリエンスの高いビジネスモデルとは

10年に一度、今回のようなグローバルな問題が発生すると仮定したとき、平時からどのようなビジネスモデルにしておくべきか。サプライチェーンは、販売チャネルは。ビジネスが大きく中断してしまうリスクにどのように備えていくのか、悩みは深い。 次世代に何を引き継ぐのか、私たちの責任が試される正念場です。 VUCAの時代は、何が起きるか先が見えない。だからこそ、非常時を見据えた経営改革、DXが今こそ求められています。

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