【横塚裕志コラム】異質な世界との出会いが人間を自由に解き放つ

自分の経験を振り返ってみても、ビビッと感じた「出会い」があります。それは、自分とは異質な方とのコミュニケーションがあった時が多いのです。 社外の研修などの参加に消極的な方は、「すぐ仕事の役に立たない」ことを理由にしていますが、実は本人の人生を豊かにしていく貴重な機会だと再認識していただきたいと思います。それで、今回は私の転機となった3人との出会いをご紹介して、「役に立つかもしれない」と宗旨替えしていただこうというチャレンジをしてみることにします。

1.ビジネス側からの「期待」を知った出会い

一人目は、50歳になった頃。JUASのイベントでビジネスとシステムの融合のようなテーマでのパネルディスカッションにお招きいただいた時のことです。私がIT企画部門の人、○○ビールの常務の方がビジネス側の方、あとどなたかとモデレーターの4人だったと思います。事前打ち合わせがないガチンコのパネルでした。 そのなかで、○○ビールの常務が「ビジネス側としては、IT部門がもっとビジネス側に対して自由に考えたことを言ってほしいんだ」という発言をされました。自分の会社内ではそういう雰囲気がないし自分にも自由に発言する勇気がないし、悩んでいたタイミングであったのでビビッときました。 パネルを忘れて私はその常務に「しかし、ビジネスには詳しくないので言い出しにくい」ということを申し上げました。常務は、「そんなこと分かっている。しかし、IT部門としての発想を期待しているんだ」と。そのとき会場にいるのも忘れて涙が出そうになったことを今でも覚えています。「そうか、期待されているんだ」と。 そこから、自分が少し変わったと思います。期待されていると思うから、考えたことは言うようになりました。何かがほどけて自由になった瞬間でした。 同じ会社の人は組織が違っていてもカルチャーは同質で、体が反応するようなビビッと感があることは起きません。常に仕事の会話になるので、無意識のうちに同じ文化の鎧を着けてしまっており何も感じません。社外のイベントだからこそ、違う会社の方との出会いが急にやってきて、何かがほどけて自由に発言できる体に少し変わりました。

2.日本を変える意欲を生んだ出会い

二人目は、50代後半の頃。情報システムの学会のイベントだったと記憶していますが、廉(ヨム)さんという韓国国籍で日本にて活躍されている方のご講演を聞く機会がありました。初めて韓国のIT化が日本より数段上をいっていることを知り、さっそく2泊3日の韓国視察ツアーに参加しました。日本ユニシスの平岡社長(当時専務)もご一緒でした。 この廉さんは、日本に1800余りある自治体の情報システムを標準にするべし、クラウド化するべしとの強い想いを持って、自分で自治体の職員になって改革してこられた方。2泊3日のツアーの間、バスに乗っての移動中、学校や病院などの視察中、夕食を食べているさなか、ずうっと、「勉強になりました、で終わらせてはだめです。日本に帰ったら行動してください。」と大きな声で語りかけてきます。「もう分かった」と言っても、ずうっとしゃべり続けます。 その熱意に私の心が何かを感じました。「日本に帰ったら何かしなくてはいけない」と。自分には日本を変えるようなことができるわけがない、と凝り固まっていましたが、そんな観念が解き放たれて、少し何かやってみるかという自由さをとりもどした瞬間だったような気がします。 それは、異質な廉さんの仕業です。この出会いがなかったら、JISAもCeFILもやらなかったかもしれません。廉さんとの出会いも、社内では決してできない体験だったと思い感謝しています。

3.DBIC設立へつながった出会い

三人目は、DBIC副代表の西野さんとの出会い。2008年頃、まだ現役の時に部下の紹介で西野さんを知りました。飲んでいる時に、西野さんが「東京海上日動のプロジェクトマネジメントのレベルは中学生程度だ」とおっしゃったので、じゃあ大人を見せろということで米国に行き・・・。この話は長くなるので紙面の都合上ここでカットしますが、このショッキングな出会いがDBIC設立につながることになります。 異質な世界との刺激的な出会いは、不思議と人間を自由にします。それが人生の素晴らしい転機になっていくのです。異質な世界との出会いは、同じ会社のなかでいくら活躍していても味わえない体験です。人間が元々持っている自由さをとりもどすために、異質との出会いを強くお勧めします。 DBICでのイベントでは、私の「横塚裕志が聞きたいシリーズ」でのゲスト、IMDやデンマークデザインセンターの方々、できるだけ異質を招聘しているので、ぜひ皆さんに「出会い」を獲得していただきたいと願っています。

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