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【横塚裕志コラム】プロジェクトマネジメントが中学生レベル(続編)

前回のコラム(「異質な世界との出会いが人間を解き放つ」)で、西野副代表との出会いを書きました。

私がまだ現役時代に西野副代表から「東京海上日動のプロジェクトマネジメントは中学生レベルだ」と指摘を受け、「それなら大人を見せろ」ということになったところで終えましたが、そのあとが知りたいという声をいただき、続きを書こうと思います。

1.システム開発のプロジェクトマネジメント

もう10年前になると思いますが、「大人」を視察するべく米国にご案内いただきました。まずは、ニューヨークのクレディ・スイスのCIOとの面談。 私から切り出しました。 「プロジェクトマネジメントの実際を聞きに来ました。日本ではプロジェクトが遅延するケースが少ないので、WBSを作ることは間接作業だという考え方のエンジニアも多く、単にスケジュールを管理するのが実態です。こちらではいかがでしょうか。」 CIO曰く、 「当社では、企画をニューヨークで行い、プログラム開発をインド、テストは時差の関係もありブラジルというソーシングをしている。私はこれら全員のタスク状況を認識していて、2週間後にどこに問題が出るかを予測しながら手を打っている。もし、プロジェクトに問題が出れば私の責任で解雇されてもおかしくない。だから、私は全員の状況を知ることが必要だ。状況を知らないまま、マネジメントしないで責任を取ることはできない。」 私にとっては衝撃的でした。責任に関する重大な決意に圧倒されました。 確かに我々は中学生レベルかもしれない、と感じ始めました。

2.M&Aのプロジェクトマネジメント

次に、ニューヨークのメットライフの経営部門に行きました。 メットライフ社は、M&Aで成長している保険会社。そこでの説明です。 メットライフ曰く、 「私たちはM&Aで成長する戦略をとっているので、M&Aを5か月で終了させるためのプロジェクトマネジメントを強化している。M&Aは、ブランドの統合、チャネルの統合、社内の給与の統合など幅広い活動が必要だ。私たちは、すべての活動を5か月で終了させるためのWBS標準を持っている。このフレームワークで次々と世界中でM&Aを実行中だ。この標準の執行状況をプロジェクトごとにモニターしていれば、1か月後にどこで問題が起きるか推測できる。 そして、このWBS標準を常に良いものにアップデートしている。」 「そしてPPMを実施している。」 「PPMはフォークソングのグループですね。」(このジョークはめちゃうけた) 「社内に多くのプログラムが動いており、その状況をリアルタイムでモニターしている。また、戦略も逐次変えていくうえ、マーケットの状況も時々刻々変わっていくので、経営戦略の優先順位にあわせて逐次、止めるプログラム、ドライブするプログラムを見極めて全体をマネジメントしている。」 つまり、システム開発だけでなくビジネスのプロジェクトも高度にマネジメントして、経営戦略の優先順位に沿って臨機応変に組み替えている感じでした。 これも衝撃的で、われわれが中学生レベルだということを確信しました。

3.データセンターの運用マネジメント

次に、西に飛び、サンノゼのデータセンターを視察しました。 当時、私たちのセンターには運用要員だけでも100名以上かかわっていたのですが、このセンターは無人でした。電気系統のメンテ要員しかいないとのこと。 これも衝撃でした。インドからリモートで運用し、インシデントが発生すればチケットを発行して、世界中の専門性ある社員に解決させるとのこと。 我々は、要すれば小学生以下だということを思い知らされたツアーでした。 10年前にこのような状況であり、そのあと、日本はほとんど変わっていないものと反省も込めて推察しています。日本では、新型コロナで外出自粛となっても運用要員はセンターに通勤せざるを得ない状況となっているのではないでしょうか。 日本企業が目覚めてキャッチアップしなくてはいけない、とこの時強く意識した結果、何年かしてDBIC設立につながることになります。

著者紹介

横塚 裕志 Yokotsuka Hiroshi
一橋大学卒業。1973年、東京海上火災保険入社。2007年に東京海上日動火災保険の常務取締役に就任、2009年に東京海上日動システムズ株式会社代表取締役社長就任。2014年より特定非営利活動法人CeFIL理事長となり、2016年にデジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)を設立、以降代表を務める。DBICでは日本を代表するメンバー企業約30社と共に、DX促進や社会課題の解決に取り組んでいる。
  • 特定非営利活動法人CeFIL 理事長 / DBIC代表
  • 日本疾病予測研究所取締役
  • 富山大学非常勤講師

デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)が活動を続ける理由

設立エピソード

2014年、世界で起きていることを肌感覚で確かめるため、半年をかけて世界を回った。そこで感じた危機感を日本企業に正しく伝え、行動を促すための研究会を発足するために奔走。26社の名だたる企業と世界有数の大学と連携し、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)の立ち上げとともに我々のイノベーションジャーニーが始まった。

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