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【横塚裕志コラム】自分の成長を長期戦略で考える

私は、自分の人生を考えるときに、少しずつでも成長していく自分でありたいと考えている。そう思うと、長期的な視座で考えていくしかない。そう簡単に成長するとは思えないから。

成長するとはどういうことかと考えると、私は自分の世界観がより広がっていくことだとぼんやり思っている。世界観とは、自分がものごとを考えるときの価値観や判断基準の深さや広さではないか、と。

3歳の孫がサラダに入っている青い葉っぱを食べない理由は、その葉っぱは青虫さんが食べるものだから私は食べない、という世界観に基づいているらしい。私自身は、青い葉っぱは健康につながり、結果、おいしいお酒をより長く飲めるという世界観からドレッシングの味でごまかしながら食べている。人間は、どうも自分の世界観の範囲でしか行動できないようだ。だから、逆に言うと、自分の世界観を広げることができると、自分の行動が深いものになるのであろう。

では、世界観を広げるためにはどうすればいいのだろうか。

それは、自分にない世界観を体験するしかないように思う。しかし、それは短期間で実行できることでもないし、本を読めばいいという安易なものでもない。

逆に言うと、短期的には、つまり明日の自分の仕事には直接役に立たないのはわかっているが、長期的な意味で体験しておく、という高度な判断がないとできない。

2020年7月17日「横塚裕志が聞きたいシリーズ第23回」のスピーカーは、税所篤快さんという31歳の方で『未来の学校のつくりかた』(教育開発研究所,2020年)という本の著者。これだけの紹介文では彼のほんの一部の顔を表現しているだけで、彼の行動はそれをはるかに超えてとんでもなく広い。ソマリランドで大学院を作ったり、ガザで活動したり、ある意味世界を股に掛けるイノベーターだ。

しかし、『未来の学校のつくりかた』の著者というタイトルが災いしたか、メンバー企業の方からは応募が極端に少なかった。「うちの会社は学校つくらないし」と考えたのでしょう。それも無理はない。自分は学校をつくる担当ではない、と考えるのも極めて自然。その判断を否定する合理的な理由はない。

しかし、長期的な視野での「大きな世界観をつくる」という観点での体験というアプローチではなかなか得難い機会だったと私は考えている。パレスチナの方々の生活習慣病を改善したいという提案もあり、対話は深く広かった。

これからも、DBICではとんでもなく大きい人をゲストに迎えたいと考えているが、そういう大きな世界観を望んでいる方が少ないのは気がかりだ。自分の仕事の狭い範囲の担当分野で必死に仕事をしていても、悲しいかな「成長」という観点ではあまり力にならないと思う。この仕事はどんな価値を生み出しているのかという問いを持ち始めると、たぶん次は、別の業界だったらどうしているのだろうか、別の国の人はどう考えてやっているのだろうか、と知りたくなる。そうなれば、仕事は業種など関係がないということが見えてくる。そうなると、直接の業種でない方にも興味が湧いてくる。そういうらせん階段を上るような成長プロセスを皆さんに掴んでほしいと思うし、DBICの人材育成プログラムの中でも世界観を広げるモジュールがあってもいいのかなと考えたりもする。

マスクが足りない、では、マスクを配ろう、という世界観では社会課題は解決できない。複雑で難解なことを、すごいレンズでアングルを引いて見てみると別のものが見えてくる感じ、そういう世界観を大事にしたい。

著者紹介

横塚 裕志 Yokotsuka Hiroshi
一橋大学卒業。1973年、東京海上火災保険入社。2007年に東京海上日動火災保険の常務取締役に就任、2009年に東京海上日動システムズ株式会社代表取締役社長就任。2014年より特定非営利活動法人CeFIL理事長となり、2016年にデジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)を設立、以降代表を務める。DBICでは日本を代表するメンバー企業約30社と共に、DX促進や社会課題の解決に取り組んでいる。
  • 特定非営利活動法人CeFIL 理事長 / DBIC代表
  • 日本疾病予測研究所取締役
  • 富山大学非常勤講師

デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)が活動を続ける理由

設立エピソード

2014年、世界で起きていることを肌感覚で確かめるため、半年をかけて世界を回った。そこで感じた危機感を日本企業に正しく伝え、行動を促すための研究会を発足するために奔走。26社の名だたる企業と世界有数の大学と連携し、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)の立ち上げとともに我々のイノベーションジャーニーが始まった。

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