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【横塚裕志コラム】昇進、視聴率、選挙からのUNLOCK

2021年1月12日にDBICで開催した新年特別セミナーで、紀里谷和明監督から得たメッセージは次のような内容だった。
「イノベーションは可能性の提案だ。未来に向けた感動の提示だ。だから、言いたいことさえ言わない人たちの集まりではイノベーションは1ミリも始まらない。」

翻って自分の行動を考えてみる。サラリーマンとして、社内では昇進が一つの目標だから上司には歯向かわない、お客様には同調する、という当たり前の態度で過ごしてきたように思う。何度か上司に歯向かってあからさまに干されたこともあった。本社の企画部門では、本来あるべきと思うことも部門の立場では言えないことも多く、また突拍子もないことを言える雰囲気はなかったし、それが普通で我慢と思ってやってきた。
他人のことに目を移すと、官僚も政治家に忖度し、忖度しない人は飛ばされている。メディアも視聴率や売上額を気にするあまり、本質的な課題を明らかにするという使命を忘れ、流行りのテーマを適当に報道している。また、政治家も選挙での当選を第一義に考えているようで、大きな世界観を語る人を見なくなった。

紀里谷氏に言われなくても、この状態では日本にイノベーションは生まれないし、イノベーションどころか災害やパンデミックの危機管理など、そのレベルは年を追うごとに劣化している。昇進とか視聴率とか選挙とか、「損得勘定」からUNLOCKしないと、私たちの未来は見えてこないということではないだろうか。

では、この「損得勘定」からどのようにしてUNLOCKしていくのかを考えなくてはならない。その方法を二つの角度から考えてみる。

1. 個人が覚醒する

個人として、損得勘定をやめて、やりたいこと、やるべきこと、他者のために貢献したいことを真摯に考える態度を取り戻すことが一番必要なことだろう。「取り戻す」と書いたのは、人は元々素直に生まれているので、成長の中でうっかり損得に走ってしまったことを是正すればいいのではないか、という趣旨だ。
では、どのように取り戻すのか。それは、DBICのDiscover Myselfというトレーニングプログラムを受けるのが最善だ。自分は何のために生きるのか、社会のために何をしたいのか、などをテーマに自分と向き合う時間が必要だ。自分一人ではなかなか難しいので、DBICのプログラムに参加して、自分と向き合う時間を作り、コーチからのアドバイスを受けることがおすすめだ。
個人が覚醒しないことには、どんな知識を習得しても行動が変わらないし、イノベーションはできない。それがDBICの5年の経験でわかってきた。いくら刺激を受けようが、いくらスタートアップのピッチを聞こうが、覚醒しない限り心が動かない。やる気にならない、「勉強になりました」で終わってしまう。覚醒しない限り、デザイン思考もアート思考もその研修は意味をなさない。まずは、個人の覚醒がとても大事なチャレンジだ。

2. 組織として、UNLOCKした経営スキームに生まれ変わる

次に、個人がUNLOCKできたとしても、会社が古い文化にLOCKされた状態のままであると活躍する場が生まれない。組織としても、古い文化からUNLOCKしていく必要がある。思ったことが自由に発言できる心理的に安全な文化を持つ組織やスキームに大きくUNLOCKする変革が必要だ。今までのピラミッド型のスキームで、上の人しか情報を持てず、意見も統制されるような軍隊型の組織では変革など始動できるはずがない。それをいくつかのコアなテーマで書いたのが、エスカレーションガイドブック(EGB)だ。EGBに沿って会社の文化をUNLOCKして、言いたいことを自由に言える土壌に変革していくことがイノベーションのための王道であるし、実は一番の近道だ。
EGBを手にすればそれが実現できるのかというと、またそれもそう簡単ではない。人事制度やマネジメントスキームを大きく変革することになるので、経営者の第二の創業と腹をくくるくらいの覚悟が必要だ。しかし、経営者に大きな時代の変わり目であるとの自覚がないとUNLOCKに舵を切る英断はできない。特に、大企業の経営者は浮世から隔離されて神輿に乗っていることが多く、時代の変化や風向きの変化に気づく感覚を失っているかもしれない。しかし、経営者の首に鈴をつけることは難しいので、経営者の覚悟次第で企業の浮沈がはっきりすることになるだろう。

目を転じて政治家の分野はどうすればいいのだろうか。私にはアイデアがない。ただ、外国の方から言われた二つのことが頭から離れない。
「与党の政策や行動が不満なのだが、野党も信頼がおけないので選択肢がなくて困っている」とぼやいたら外国の方はこう言った。「まずは、与党にNOと言わなければなにも始まらない」と。そして、「想いのある政治家を自分たちで育てようとしたことがありますか」と。すべて「自分ごと」として考えてみることが第一歩か、とは思うのだが・・・。

著者紹介

横塚 裕志 Yokotsuka Hiroshi
一橋大学卒業。1973年、東京海上火災保険入社。2007年に東京海上日動火災保険の常務取締役に就任、2009年に東京海上日動システムズ株式会社代表取締役社長就任。2014年より特定非営利活動法人CeFIL理事長となり、2016年にデジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)を設立、以降代表を務める。DBICでは日本を代表するメンバー企業約30社と共に、DX促進や社会課題の解決に取り組んでいる。
  • 特定非営利活動法人CeFIL 理事長 / DBIC代表
  • 日本疾病予測研究所取締役
  • 富山大学非常勤講師

デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)が活動を続ける理由

設立エピソード

2014年、世界で起きていることを肌感覚で確かめるため、半年をかけて世界を回った。そこで感じた危機感を日本企業に正しく伝え、行動を促すための研究会を発足するために奔走。26社の名だたる企業と世界有数の大学と連携し、デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)の立ち上げとともに我々のイノベーションジャーニーが始まった。

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