【横塚裕志コラム】成果主義人事制度がイノベーションを阻害している

ほとんどの企業で行われている「成果主義人事制度」が、多くの社員の挑戦的な行動を阻害していると考えられる。故に、イノベーションを大事にする企業に変革しようと考えるなら、この人事制度を破棄して、新しい制度に変革する必要があるだろう。

「成果主義人事制度」とは、何を指しているか

個人別に1年間の業績達成目標を定める。与えられた組織目標を組織内の個人にブレークダウンして、個人別の目標に振り分け数値化して定める。そして、1年経過後に、達成レベルを数値化して、組織内のメンバーの達成度をABCにランク分けする。
ABC別に翌年の給与額を算定する。このような制度を指している。

この制度の何が問題か

  • 組織目標自体が既存の枠の中での目標であり、それを受けた個人目標も手堅いものとなるので、イノベーションを企画するという目標にはならない。
  • 達成度で翌年の給与が決まる仕組みなので、挑戦的な目標は設定しないことになり、新しいことへの取り組みは進まない。
  • 元々日本企業が真似した米国のMBO制度は、「Management by Objectives and Self Control」といい、挑戦的な目標を従業員が自分で決めて自主的に挑戦しようというものであったが、日本では自主的が消えてノルマになってしまった。
  • 1年間という長い期間を規定することは、VUCAの時代と言われ変化が激しいビジネス環境になじまない。顧客の変化、思わぬライバル会社の登場、などなど時々刻々変化する時代に、1年間目標を変えないという考え方が大きな問題。
  • 個人別の目標になっているが、今の時代、ほとんどのプロジェクトがチームのコラボレーションによって行われているので、コラボを推進する動機になりにくい。
  • 制度自体が2000年くらいから20年続いている企業が多く、どんどん複雑になったり、上司部下の面接の回数も増えて、大きな負担になってきている。
  • 結果としての目標達成度は、その社員の努力以外のいろいろな要因で変化するもの。低評価のB、Cランクに評価されると不満を感じることになり、社員のモチベーションが下がる。
  • 常に評価されているという印象が強く、「心理的安全性」がない環境となるので、自由闊達な発言や行動、挑戦的な行動を阻害する。

でも、イノベーションが起きている米国から学んだ制度ではないか

米国の制度は日本とは異なり、自主性をメインにした制度になっている。また、2010年くらいから少しずつ、MBOを廃止して、OKR(Objectives and Key Results)などの新しい制度に変革する会社が増えている。(「人事評価はもういらない 成果主義人事の限界」松丘啓司著)

結果で評価しないと不公平にならないか

結果の指標を業績だけで見るのが正しいとは言えないし、業績の見方も絶対的に正しいとは限らない。

人事部が変えようとしない、どうすればいいか

制度の問題点、課題を整理するとともに、諸外国での実情調査などを行い、経営や人事部への変革提案をしてはどうだろうか。多くの企業が課題認識を持っているとの情報もあり、簡単ではないが共感を得られる可能性がある。もし、必要であれば、DBICの仲間で研究会を作り、制度変革のうねりを起こすこともありだと思う。

とにかく、問題ははっきりしている。変革する勇気を!

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