これからの経営の大きなテーマが「サステナブルな経営」だ。特に、「ヒト」という資源は世界的に見ても限界にきているなかで、限られた資源「ヒト」をいかにサステナブルに活用していくかが経営の最重要戦略となっている。
一方、日本の大企業のこれまでの人事戦略を振り返ると、人財の無駄遣いをしてきた側面もあるのではないだろうか。大企業では、学歴の良い優秀な新人を大量に採用し、社内競争で少数の課長・部長を選抜する。その結果、社内競争で報われなかった多くの人が上意下達ピラミッドのなかで言われたことだけをやっているという状況を招いている。その状況の中では、多くの社員がその能力をあまり発揮せずに眠らせているように見える。まさに、「もったいない」し、サステナブルではない、ように思われる。もちろん、それは他人事ではないし、自分も反省しながら書いている。
では、限られた資源である「ヒト」の能力を十二分に活用したサステナブルな制度とはどのようなものだろうか。そのサステナブルな経営を実践しているのが北欧の国・企業であり、私たちは彼らから多くのことを学ぶことができると思う。
そのキーが「信頼経営」であり、その根幹をなすのが「社員ファースト」という考え方だ。今後、その制度の内容を調査したいと考えているが、断片的な情報を集めると以下のような考え方だ。
このような仕組みが実現できれば、社員全員がそれぞれの能力を120%発揮できる状況になることは想像できる。しかし、現実にこのような仕組みをつくることはとても難しいのではないかと考えるのが今の私たちの本音だろう。
例えば、「日本には日本の事情があり、日本の仕組みの良さがあり、大企業ならそれなりに新卒人気もあるし、慌てる必要はない」というご意見。あるいは、「そのような主張をするなら、具体的な事例を見せてもらわないと信用することはできない。政府も学者もそのようなことを主張している人はいない」というご意見も多い。「経営としては、かなり以前から残業縮減、休暇取得へ向けた活動をやってきてある程度改善してきているが、残業無しや5週間の休暇は無理でしょう」というご意見が多数だと思う。
しかし、北欧諸国は国土や人口が少なく、「ヒト」を活用する以外にリソースがないなかでグローバルの激しい競争を勝ち抜こうとしている。その必死の努力が、上記の「社員ファースト」の状況をつくるサステナブル戦略にたどり着いている。その戦略で間違いなく生産性を飛躍的に拡大して、日本の1.5倍の平均年収を獲得している。この事実を無視して日本流を貫いていていいのだろうか。
私は、日本は今、組織・人事戦略を大きく変革すべき時期に来ているのではないかと考える。例えば、「ヒト」資源の確保だけでも以下のような課題が表面化している。
人財確保だけでも大きく変化することが求められているなか、人事評価、社員育成などのスキームも新しい時代への変革が求められている。従って、断片的に人事制度を改革するのではなく、このタイミングで「社員ファースト」の考え方を学びながら、目指すべき新しい組織・人事制度の方向性全体を議論していくことが、サステナブル経営の大事な一歩になってきていると私は思う。
※DBICでは12月16日にVision Paper 2「Small Smart Nationsから学ぶ信頼経営への進化」を発刊しました。このコラムにも通じる内容ですので是非ご一読ください!
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