【横塚裕志コラム】フラットな関係が創造と挑戦を生む

DBICの共創パートナーでもあるデンマークデザインセンターのクリスチャン・ベイソンCEOは、デンマークが競争優位を築いた理由を以下のように答えている。「労使関係のフラットさが、新しいアイデアを生み、挑戦しやすいオープンさを生んでいる。心理的安全性があり、どんな意見も無視されることはない。」と語り、フラットな関係が信頼を育み、創造と挑戦を誘発する企業風土をつくっていることを強調している。(「DBIC VISION PAPER 2」より)
この「フラットな関係」がとても重要な要素のようだ。現状の日本企業では、経営と従業員とは雲の上下にあり、フラットとは縁遠い状況だ。タテの上下関係で社長・役員・部長・課長が組織化されており、直属の上司にも自由に発言することもままならず、創造や挑戦が生まれにくい土壌になっているということは否定できない。

では、これから日本企業においてフラットな関係を作るためにはどうすればいいのだろうか。経営側と従業員側それぞれに課題があると思う。
従業員側としては、しっかり上司と議論できる能力を学習することと、組織に従属するのではなく自分の想いを持つマインドセットを醸成することが必要ではないだろうか。もちろん、上司とは経験や学習の差があることは認めつつも、新しい角度や新しい技術からの視点で自分の想いを語ることができれば、立派に議論は成り立つのではないだろうか。その議論や対話の中から創造の芽が生まれ、挑戦の志が生まれる。日本企業の文化の中では、なかなか上司や経営の考えに反論することが心理的に難しい雰囲気がある。しかし、その社内の常識みたいなものも、別の業界とか海外の企業の考え方を学ぶことで視野が広がり、正しく反論することができる。
自分の想いを常に持つことを心掛け、組織や上司にとらわれずに「正しい」ことを求めて「学び」を継続していく努力が必要だろう。その努力が、組織・会社を客観的に見る態度・マインドを醸成し、組織の洞窟から抜け出て会社の真の課題を正しく評価することができるようになる。そうなれば、きっと創造や挑戦のテーマが見つかり、実践する勇気が湧いてくるに違いない。この従業員側の課題はしっかり議論したいので別の機会で詳しく考えることにして、経営側の課題を考えてみよう。

経営側として、創造や挑戦が定常的に行われる企業文化に変革するためには、どのような施策が考えられるのだろうか。VISION PAPER 2に掲載されている4か国の方々のインタビューからそのヒントを以下に列挙する。

  1. 従業員に多くの学習時間を与え、投資する
    「北欧では『人間中心のデザイン』という概念がある。デジタルシステムも、高度か完璧かでなく、労働者を時間や制約から解放する道具として考える。彼らに学習時間を与え、投資し支援すべきだと経営陣は考える。彼らは重要な資源であることを理解しているからだ。」(デンマークデザインセンター クリスチャン・ベイソンCEO)
  2. リーダーとは生涯学び合い、相手を褒め勇気づける人
    「よいリーダー(人生の先輩)は若者に問いかけ、対話をしながら応援する、勇気づける、称賛し褒めて育てる。リーダーは常にコンフォートゾーン(快適地帯)に留まらない学習者であり、失敗は成功のプロセスと捉える。」(駐日スウェーデン大使 ペールエリック・ヘーグべリ氏)
  3. リーダーにはメンバーの意見を引き出す責任がある
    「リーダーが自分はすべてを知っているという雰囲気を出さないことだ。でないとメンバーは誰も発言しなくなる。リーダーはすべてを知っているわけではない。ボスには権力があり、スタッフには知識がある。この2つを融合させることが大切。そのためにはリーダーは質問する力や自由に意見を引き出す雰囲気を創ることが必要だ。」(CapitaLand アーウィン・タン氏)
  4. 人財育成の考え方
    「タレントやポテンシャルを生かすことを重視している。」
    (IKEAジャパン マティアズ・フレドリクソン氏)
  5. 組織をフラット化する(これは多くの方が語っている)

以上、いくつかを挙げてみたが、まだまだ多くのヒントをいただいている。すぐにでも検討を始めたいテーマばかりだ。残業をゼロにするためのデジタル活用、社員のポテンシャルを引きずり出す人財育成、などなど、一つ一つが実現するのが難しい大きなテーマだが、長年かけて必死に取り組んできた方々の思いは熱くて尊い。

※DBICでは12月16日にVISION PAPER 2「Small Smart Nationsから学ぶ信頼経営への進化」を発刊しました。このコラムにも通じる内容ですので是非ご一読ください!
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