前回のコラムで、ChatGPTに日本企業のユーザビリティのレベルを世界と比較していただき、日本企業が持つ課題を分析した。その課題が以下の5つだ。
① 日本企業は、製品づくりに顧客を見ていない
② 日本企業は、顧客の反応を調べていない
③ 日本企業は、多くの機能を盛り込むことが顧客のためと誤解している
④ 日本企業は、世界レベルでのベンチマークを行っていない
⑤ 日本企業は、「デジタル化」の巧拙が競争力の大きな要素だと考えていない
上記の特性は、日本企業が隆盛を誇っていた1970~80年代の戦略がそのまま残っているということだろう。物が乏しい時代に大量生産・大量販売して成功した戦略だ。製品は機能が多いほど便利だし、多様な顧客のニーズには多様な機能で答えるという考え方となっており、ある意味順当な戦略ともいえる。 しかし、今、時代は大きく変わって「価値」の時代になり、この多様な機能で勝負する「企業論理」では通用しない。顧客はシンプルで分かりやすいものに価値を感じているからだ。
企業と顧客がダイレクトに接続する「デジタル手続き」においても、日本企業の「企業論理」という特性がそのまま現れて、情報盛りだくさんの複雑な操作性となっているケースが多く、顧客にストレスを与えてしまっている。そして企業側はそれに気がついていない。
21世紀に入り、ビジネスの目的が「顧客の価値づくり」に変わるタイミングで、ビジネスの「デジタル化」も始まった。そして、世界は、それまでの企業論理をそのままIT化するのは「顧客起点」にならないので効果は出ない、ということを学んだ。その大事なポイントがなぜか輸入されずに、IT技術だけが日本に入ってきてしまったようだ。 「デジタル化」が効果を出すために必要な考え方、「顧客起点」とか「マネジメント」とか「ビジネスアナリシス」とか、それらが正しく日本に輸入されていない事実をもっと日本は真摯に受け止める必要がある。日本企業は、デジタルの本質を学んでいないから、算盤を単に電卓に変えただけの「IT化」に留まっている。 あらためて、日本企業はそれらを学び直すことをしなくてはならないと思う。ビジネスの思想が「企業論理」という古いままでは、デジタルが武器にならないのだ。
顧客起点を始める前の最大の壁は、シンプルが重要という思想を日本企業が採用できるか、という問題だろう。多機能の方が顧客のニーズをカバーしているに違いない、という思想の方が日本人にはなじみやすい。だから、シンプルの方がいいという思想は採用できないというのが本音ではなかろうか。 私も古巣の会社で、会社を二分する猛烈な議論をした経験がある。保険商品の複雑性を顧客ニーズを満たすものと考えるか、シンプルに改革すべきと考えるか。それから20年たつが、たぶん、二分されたままではなかろうか。
欧米の企業は、なぜこぞってシンプルを目指すのか。その理由をChatGPTに聞いてみたが、かなり理論的なものだった。我々の空中戦とは全然違うものだ。
(1)多機能よりもシンプルなデザインが好まれるという考え方は何か
(2)シンプルさが好まれる有名な理論
やはり、欧米の企業は明確な理論に基づいて行動していることが理解できる。「顧客起点」は、その言葉のイメージだけで行動しても、軽薄で芯が通らない「なんちゃって」になってしまう。学ばなければ成功はない。
他のDBIC活動
他のDBICコラム
他のDBICケーススタディ
【レポート】2024年9月 DBICアップデート
【レポート】UNLOCK QUEST 2024年上期③
【レポート】UNLOCK QUEST 2024年上期②
【レポート】DBIC・ATD特別招聘セミナー:「ATDに学ぶ世界の人財開発の現状と未来」
一覧へ戻る
一覧へ戻る
一覧へ戻る