【横塚裕志コラム】問題を「自分ごと」と捉え、変革に向けて行動する意欲 その③

このシリーズは、以下の方程式をベースに進めている。
(IT協会「デジタル業務改革フォーラム」で滋賀大学河本教授が提唱したもの)
「変革」能力=[会社を良くしようとする意欲]×[問題解決能力]×[各分野のスキル]
「会社を良くしようとする意欲」=「問題を「自分ごと」と捉え、変革に向けて行動する意欲」

前回は、この意欲の醸成について、日本企業は科学的、体系的、戦略的に実施してこなかったのではないかと反省をした。そこで、今回は、欧米企業がこの問題について、どういうスタンスで取り組んでいるのかを調べてみようと思う。

1. 欧米企業は競争戦略として「意欲=マインドセット」を重視している

グローバル競争を勝ち抜くためには、成果を最大化する「意欲=マインドセット」を持つことが必須と考えている。その理由をChatGPTに調べてもらった。

  1. 成果の向上とパフォーマンスの最大化
    近年、**成長マインドセット(Growth Mindset)**という概念が注目を集めています。この考え方は、心理学者キャロル・ドゥエックによって提唱され、能力や知識は固定されたものではなく、努力と学びによって伸ばせるという信念を持つことで、個人の成果が大きく向上するというものです。
    成長マインドセットを持つことで、挑戦を前向きに受け入れ、失敗を学びの一環として捉えることができるため、より高いパフォーマンスを発揮する可能性が高まります。このような認識が広まり、個人や企業の成果向上に直接的な影響を与えると考えられるようになりました。
  2. 変化のスピードと不確実性への対応力
    21世紀の現代では、技術革新や社会構造の急速な変化が進んでおり、未来が予測しにくい時代になっています。このような不確実な環境においては、問題解決能力や柔軟な思考、適応力が求められます。
    固定的なマインドセットでは、困難な状況に直面した際に心が折れやすく、解決策を見出すことが難しくなります。しかし、成長マインドセットや柔軟なマインドセットを持つことで、変化に対応し、失敗を乗り越え、次に活かす力を養うことができます。この点が、現代の不確実性の中で特に重視されるようになった理由です。
  3. 競争環境の激化
    グローバル化が進む中で、企業や個人は世界規模で競争を強いられています。この競争が激しくなる中で、個々のモチベーションや行動の心理的な基盤に注目が集まりました。
    成果を上げるためには、単にスキルを持っているだけでなく、自己改善に対する意欲や挑戦への態度が重要です。個人のマインドセットが競争における成否に大きな影響を与えることが広く認識され、成長や改善を促すためのマインドセットが求められました。
  4. 精神的健康とウェルビーイング
    精神的健康やウェルビーイング(心の健康)が、特にビジネスや教育の現場で重要視されるようになった背景もあります。多くの人がストレスや不安、仕事のプレッシャーに悩んでおり、それに対処するためのマインドセットの重要性が認識されています。
    健全なマインドセットを持つことで、ストレスや困難な状況に対する耐性を高め、心理的な安全性を維持できるようになります。このため、職場や教育現場で心理的なサポートやマインドセット強化が重要視されるようになったのです。
  5. 学習と成長の促進
    欧米の教育システムでは、学力だけでなく「どのように学ぶか」「どのように成長するか」が重視されるようになっています。特に、学習の過程でどのようにマインドセットが影響を与えるかが注目されています。 成長マインドセットを持っている学生は、挑戦的な課題にも積極的に取り組み、失敗から学ぶことができるため、学びが深まります。このような教育のアプローチは、長期的に見ると学業やキャリアの成功に繋がるため、教育現場でも広く取り入れられています。
  6. 自己啓発と成功事例の影響
    最近では、成功した起業家や著名人が、自己啓発やマインドセットの重要性について積極的に発信することが増えました。例えば、トニー・ロビンズシモーヌ・バイルズ(オリンピック金メダリスト)などが自らの成功の秘訣として、強いマインドセットを強調しています。
  7. テクノロジーとリーダーシップの進化
    デジタル化が進む中、リーダーシップの在り方も変化しています。従来の「命令型リーダーシップ」ではなく、共感やチームメンバーの心理的安全性を重視する「サーバント・リーダーシップ」や「コーチ型リーダーシップ」が注目されています。
    企業が効果的にリーダーシップを発揮するためには、リーダー自身が自己成長に取り組み、チームメンバーに対しても成長マインドセットを促進する必要があります。これは、単に指示を出すだけでなく、メンバーのモチベーションや心理状態を理解し、導く力が求められるからです。

2. 「マインドセット」が経営課題のど真ん中

上記のように、欧米の企業は明確な根拠を持って、自社の競争戦略のど真ん中に「マインドセット」を取り上げて取り組んでいる。元々個人の意欲が強い文化にもかかわらずだ。それだけ、経営にとって重要な要素だと認識しているのだろう。
有名な例が、マイクロソフトだ。同社は、サティア・ナデラCEOの指導のもとで、「成長マインドセット」を企業戦略の中核に据えている。「成長マインドセット」を浸透させることで、「失敗から学ぶ」姿勢がつくられ、変革や挑戦が企業文化として根付き、企業自体を大きくクラウドベースの業態に変えることができたと言われている。マインドセットは個人の心の持ち方ではなく、企業文化という経営課題なのだ。

3. 欧米企業とて取り組んでまだ20年

このモチベーション・意欲の問題は、欧米企業であってもまだ歴史が浅い取り組みのようだ。有名な「成長マインドセット(Growth Mindset)」という概念は心理学者キャロル・ドゥエックが2000年に提唱したものだ。
要するに、21世紀に入り、VUCAの時代でグローバルな競争が激しい時代に大きく世界が変わり、その新しい競争の中で戦うための戦略の一つが「マインドセット改革」だったということではないだろうか。
シリーズ①で、日本企業の社員の意欲の低迷は構造的な現代病ではないかと書いた。放置しておくと罹患してしまう現代病に対して、欧米企業は危機感を持ち「マインドセット改革」に戦略の焦点を当て始めたのだろう。

ならば、まだ遅くない。日本企業も、「マインドセット改革」をもっと真剣にとらえ直し、経営戦略の中枢に取り上げるべきではないだろうか。
この改革は簡単ではなく期間も長くかかるだろう。欧米では、どのように改革を進めているのだろう。それを次回は考えてみる。

他のDBIC活動

他のDBICコラム

他のDBICケーススタディ

一覧へ戻る

一覧へ戻る

一覧へ戻る

このお知らせをシェアする