【横塚裕志コラム】問題を「自分ごと」と捉え、変革に向けて行動する意欲 その②

前回のコラムで、滋賀大学の河本教授の主張をベースに、変革を実行するための能力は次の方程式で書くことができるとした。
「変革」能力=[会社を良くしようとする意欲]×[問題解決能力]×[各分野のスキル]
「会社を良くしようとする意欲」=「問題を「自分ごと」と捉え、変革に向けて行動する意欲」

この方程式の主張は大きく二つある。
・ いくらスキルを学んでも、意欲が0であれば、掛け算した能力は0ということ
・ 「問題を「自分ごと」と捉え、変革に向けて行動する意欲」を育てるべき

今回は、「問題を「自分ごと」と捉え、変革に向けて行動する意欲」の獲得について、考えてみたい。

1. 日本企業の現状

この「意欲」のテーマは、日本企業の中では「道徳」の教科のようにとらえる傾向がある。「主体的に行動しなさい」という指導で改善されるとか、優秀な社員はみな強い変革意欲を持っているというような幻想に包まれている。
私も昔、人事部主催の研修で「主体性」のコースを受けた記憶があるが、3日坊主ですぐ忘れてしまい、この程度の研修では意欲を獲得することは難しいように思う。日本人ばかり見ているとそこに気がつかないが、外国人材と比較してみると、圧倒的に負けていることは一目瞭然だ。 もっと、この課題の重要性や深刻さを受け止めるべきと思う。

2. 「意欲」を引き出すトレーニング

世界にはどのような研修があるのか、ChatGPTに聞いてみた。

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モチベーションを引き出すためのトレーニングやコーチングには、いくつかの有効なアプローチがあります。これらは個人の意識や行動を変えるために設計されており、自己認識を高め、目標達成に向けて積極的に取り組む力を引き出します。以下にいくつかの代表的な方法を紹介します。

  1. 目標設定とアクションプラン作成
    目標設定はモチベーションを引き出すための基本的なアプローチです。具体的な目標を設定し、それに向けたアクションプランを作成することで、個人の意欲を高めることができます。
  2. 自己認識を高めるトレーニング
    自己認識を深めることが、モチベーションを引き出すための重要なステップです。自分の強みや価値観、動機を理解することで、仕事への意欲が高まります。
    • 自己分析: 個人が自分の強みや弱みを理解するためのトレーニング。自己理解が進むと、どのように仕事を進めるべきか、自分に最適な環境やアプローチが見えてきます。
    • 価値観の明確化: 自分が大切にしている価値観を洗い出し、それを仕事にどう反映させるかを考えることで、仕事に対する情熱が高まります。
  3. ポジティブ心理学に基づくコーチング
    ポジティブ心理学は、個人の強みやポテンシャルを最大限に活かすことを重視します。モチベーションを高めるために、ポジティブな心の状態を作り出すコーチングが有効です。
    • 感謝の実践: 感謝を意識的に行うことで、ポジティブな感情が強化され、モチベーションが向上します。日々の仕事で感謝すべきことを振り返り、書き出すことが効果的です。
    • フロー体験の促進: 「フロー状態」--すなわち、仕事に没頭し、時間を忘れるような状態を作ること。これを促すためには、仕事の難易度が適切であることや、明確な目標を設定し、即時フィードバックがあることが大切です。
  4. 成長マインドセットのトレーニング
    成長マインドセット(Growth Mindset)は、自分の能力が努力や学びによって向上すると信じる考え方です。このマインドセットを持つことで、失敗を恐れずに挑戦し、自己成長を意識するようになります。
    • 挑戦を恐れない: 成長マインドセットを育むために、失敗を「学びの機会」と捉えるトレーニングを行います。
    • フィードバックを活かす: フィードバックをポジティブに受け入れ、自分を改善するために活用する習慣をつけることが重要です。
  5. メンタル・リジリエンスの向上
    メンタル・リジリエンスとは、ストレスや困難に直面したときに、それを乗り越える力です。この力が高い人は、挫折を乗り越え、モチベーションを維持しやすくなります。
    • ストレス管理技法: 簡単な呼吸法やマインドフルネス瞑想を取り入れることで、仕事のストレスを軽減し、集中力やモチベーションを維持することができます。
    • 感情の調整: ネガティブな感情を適切に認識し、コントロールする方法を学ぶことで、仕事に対する積極的な態度が保たれます。
  6. コーチングセッション(個別・グループ)
    個別やグループでのコーチングセッションを通じて、個人のモチベーションを引き出すことができます。コーチングは、目標設定、課題の特定、行動計画の策定を支援し、個々の成長を促進します。
    • GROWモデル: コーチングでよく使われるフレームワークです。GROWは「Goal(目標)」、「Reality(現状)」、「Options(選択肢)」、「Will(意志)」の4つのステップで構成されます。これを通じて、自己認識を深め、モチベーションを高める具体的なアクションを導き出します。
    • 問いかけによる気づき: コーチは適切な質問を通じて、クライアントが自分自身の考えを深掘り、目標に対する意識ややる気を引き出します。たとえば、「この仕事において、最も重要なことは何ですか?」や「成功するために自分にできることは?」という問いかけです。
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3. 「個人の意欲」を醸成することは大きな経営課題と意識すべし

上記のトレーニングの考え方を見てわかる通り、「個人の意欲」醸成は、簡単なテーマではないことが理解できる。1、2日の研修で済む話ではなく、長期にわたって計画的にトレーニングやコーチングを実施すべき深いテーマだと考えるべきではないだろうか。特に、「自分ごととして捉える」能力を育むためには、2の自己認識を深めるトレーニングや4のGrowth Mindsetが有効なのではないかと推察する。

「個人の意欲」は、ただ指示通りに動く人を0%、フロー状態で活動する人を120%とすると、0~120の大きな幅の中にあるものと思われる。もし、全員がフロー状態で活動したら、凄まじい生産性と大きな成果が間違いなく実現するだろうし、全員が指示待ち人間だとすると何の変革も起きない停滞した会社になるだろう。
その意味で、これは明らかに「経営課題」だと考える。にもかかわらず、日本企業の実態はどうだろうか。人事部任せ、研修会社任せ、社員任せ、になっているのが実態ではないだろうか。

自分の今までを振り返ると、マインド研修とかモチベーション研修とかと言う名前の研修で「やった気」になっていたが、本質的に「意欲」の醸成を実行してきていなかったのではないかと反省をする。もっと、科学的に、長期的に、体系的に、戦略的に、「意欲醸成」に取り組むべきではないだろうか。
次回は、欧米の企業がどう考えているのかを軸に掘り下げていこうと思う。

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