シリーズ④の今回は、ヨーロッパの伝統的な企業が実行した「マインドセット改革」や企業文化改革の事例を調べてみた。
1. Siemens(ドイツ)
Siemensは、ドイツを代表する伝統的な企業であり、長年にわたり、イノベーションと人材育成に注力してきました。特に最近では、デジタルトランスフォーメーションとともに「Growth Mindset」の文化改革を進めています。
期間と時期
具体的な改革内容: Siemensは、特に**「Siemens 2020+」という戦略に基づき、企業文化を変革し、社員一人ひとりが自分の成長に責任を持ち、イノベーションを推進できるように支援するためのプログラムを導入しました。これには、「Growth Mindset」**を意識した組織文化の変革が含まれています。
結果: Siemensは、デジタル化とともに社員一人ひとりの成長を支援し、柔軟でイノベーティブな企業文化を作り上げました。この取り組みは、特に若年層社員のエンゲージメントや企業全体の革新性の向上に寄与しています。
2. Nestlé(スイス)
Nestléは、世界的に展開する食品業界の巨人であり、伝統的な企業文化を持ちながらも、近年「Growth Mindset」を中心に企業文化の改革を進めています
期間と時期
具体的な改革内容: Nestléは、企業全体のパフォーマンスと社員の成長を促すために「Growth Mindset」を導入し、特に人材開発に力を入れています。2015年以降、特に**「Nestlé Continuous Excellence(NCE)」**という人材開発プログラムを通じて、社員が持続的に学び続け、自己成長することを奨励しています。
結果: Nestléは、この取り組みを通じて、社員のエンゲージメントと生産性が向上し、企業の成長にも貢献しています。社員の成長意欲が高まり、イノベーションを支える文化が形成されました。
これだけのグローバルに超有名な企業でも、「マインドセット改革」に全社を挙げて、それも、10年以上にわたって取り組み、未だ継続中という事実に圧倒される。 「マインドセット」が競争力の大きな要素だと経営が認識し、理論的で、体系化され、会社を丸ごと変革するスケールの大きいプロジェクトを起こしている。 そして、その開始時期が、2014年,2015年だ。IMDが「デジタルビジネス・トランスフォーメーションセンター」を立ち上げたのが2015年。世界が大きく新しい時代へとかじを切った時期だ。このころ、私と西野でヨーロッパを視察して、世界の企業が大きく変革し始めている息吹を感じ、2016年、DBICを立ち上げた。このころから世界は大きく動き出しているのだ。
日本企業が今のままでいいのだろうか。現状のままでは、ますます世界企業との競争力に差がついていくことは明白だろう。日本企業でも、リーダーシップ研修やDX研修などは行われているが、それらは、問題意識が経営レベルになっておらず、断片的であり、単発的であり、企業文化を変革するスケールになっていない。もっと、VUCA時代に合わせた新しい考え方を体系的に学んで、新しい時代の人材育成プロジェクトを企画・デザインすべきではないだろうか。人事部自身が自分ごととして、大きな経営変革の渦の中に巻き込まれているという認識を持つべきではないだろうか。
私たちDBICは、「UNLOCK」という3か月間実施する「マインドセット覚醒プログラム」を実施して、マインドセットが覚醒されると本人の能力が数倍にも大きくなることを目の前で見てきた。そして、3か月では不足していることも感じ、また、会社に戻り現業を始めると元のマインドに戻りかねない状況も見ている。 そして、「UNCHAIN」という問題解決を学ぶプログラムでは、「UNLOCK」されていない人はほとんど学ぶ効果がないことも実感している。 「UNLOCK」(マインドセット改革)から「UNCHAIN」(問題解決トレーニング)というステップは、海外の取り組みと比較しても遜色ない新しい考え方に基づいているものであり、有効性は間違いない。 ただ、単発では大きな効果が期待できない。会社を挙げた大きなスケールでの取り組みが望まれる。全社的な取り組みを起こすことは、決して簡単ではないことはわかるが、この課題に正面から挑戦する企業を応援したいと考え、日々行動している。
滋賀大学 河本教授が課題提起しているテーマ、すなわち、「変革意欲」がなければいくらスキル研修を重ねても変革はできない、という警鐘を、もっと深刻に経営が受け止めるべきだと思う。メディアやベンダー、そして政府がDX研修、DX人材とかはやし立てるが、それに毒されてはならない。グローバル企業がそうしているように、「意欲」「マインドセット」の問題を強く認識すべきだと思う。
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