「AIエージェントは絆創膏ではない。体質改善を行うためのものだ。」と語っている映像を見たが、まさにその通りだと思う。
一部門の一部業務だけを自動化する、いわば傷口に絆創膏を貼るようなレベルでは宝の持ち腐れだ。部門をまたぐ一連の業務プロセスを対象とし、ビジネス全体の競争力を高める仕掛けとして活用することこそが、AIの重要なポイントだ。
製造業の例を考えてみる。私は製造業の経験がないため若干ずれているかもしれないが、典型的なケースを想定したつもり。
受注〜在庫〜生産〜出荷のサプライチェーン
現行では以下のように、部門ごとに最適化されたプロセスが構築されている。
AIエージェント導入後の姿
AIエージェントは「全体の意思決定」を自律的にサポートする。
その結果
AIを活用して新しいプロセスを実現するには、以下の手順が必要となる。
現状の組織・人材では、ほとんどの会社が実施に苦労するだろう。
DXの失敗が示すように、「変革」と掲げながら、実際は「現場の細かい業務のIT化」で終わってしまうパターンが、AIでも再び起こりつつある。今の体制ではできないだろうと思われる理由が二つある。
企業の組織はピラミッド型の権限構造で動いており、各部門は業務プロセスの一部分だけを管理している。そのため、エンドツーエンドの業務全体を見て変革を進める役割の部門が存在しない。
部門がなければ、誰もその役割を担わない。これはDXでも起きた。
経産省が示すDXスキル標準における「ビジネスアーキテクト」と「ビジネスアナリスト」の能力を持つ人材がいなければ、先述の検討タスクを進めることは難しい。
AI活用とは、人の意思決定領域に踏み込み、業務プロセスを「人とAIでどう分担するか」を再設計する作業である。業務プロセスの専門家とAIの専門家が協働しなければ成立しない。デジタル化以上に深く難しい取り組みだ。
絆創膏を貼っているだけでは、何の効果も生まれず、コストだけがかさんでいくものと思われる。
AI導入の成否が企業の将来を左右することになると考えると、経営としてどのような体制で取り組むべきか、今責任を持って検討するべき時ではないだろうか。
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