【レポート】DBIC地方創生研究会 ローカルツアー九州(2018年1月期)

2018年1月25日(木)北九州小倉編

小倉 コワーキングスペース 秘密基地

 初日は「ワイガヤセッション #1」にもご登壇いただいた、岡秀樹様が代表を務める北九州、小倉駅前のコワーキングスペース秘密基地に集合。本研究会のコーディネーターを担当するDBICディレクター渋谷健によるツアーのブリーフィングからスタートしました。  研究会を通して設定された「かせぐまちづくり」をテーマに、単なる視察ではなく「どうやって自分の会社の事業に取り入れよう」という「欲望」を持ってツアーに参加してほしいとの説明がありました。 コワーキングスペース秘密基地代表の岡秀樹様  続いて岡様から秘密基地についてご説明です。秘密基地はオープン5年目に入り、これまでに「創生塾」という起業プログラムを通して40人以上の創業者を輩出しています。新しい仲間が増えると、新しいビジネスが生まれる、という現象が面白いと語る岡様。秘密基地から次に生まれるビジネスはなんと「焼き鳥店」ですが、これは「焼き鳥職人が仲間になったから焼き鳥屋をオープンする」という経緯から生まれたそうです。  「新しい仲間ができたとき、その人がどんなスキルを持っているかワクワクしながら会える」というのがコワーキングスペースならではの面白さだと岡様は語ります。その想いが発展して生まれたのが「一般社団法人まちはチームだ」であり、小倉、そして北九州市全体を通した人と人をつなぐビジネスを生む「創生塾」へとつながっています。 岡秀樹様自らがデザインした秘密基地。本格的なキッチンを備え、結婚パーティやスポーツイベントにも対応しており、地元の人が集う拠点にもなっている 秘密基地スタッフ紹介スペース、ここも「スキル」「どこで貢献したいか」をアピール。どこに所属しているかではなく「なにができるか」でチームが生まれる。秘密基地社員は兼業OKで、外注費と給料を並行してもらいながら個のチカラを磨いていくこと、そしてソーシャルに人をつないでプロジェクトを進める感性を高めていくことを両立させている 常駐型の利用もできる4〜6畳のレジデンススペース

小倉から門司港へ

 ここで一同は秘密基地を後にして電車で小倉から17分ほどの門司港(もじこう)に向かいます。明治22年に石炭などを扱う国の特別輸出港に指定され、日本三大港(神戸、横浜、門司)のひとつとして国際貿易の拠点となっていた門司港は、終戦とともに大陸貿易や石炭流通の縮小を受けて衰退していました。 北九州出身の漫画家、松本零士先生の代表作『銀河鉄道999』のモデルになった門司港駅  そこで、明治大正時代の建物を復活させ、ホテル・商業施設などを大正レトロ調に整備した観光スポットとして1995年(平成7年)3月にグランドオープンしたのが「門司港レトロ」エリアです。現在では年間の観光客数が200万人を超え、大成功を収めています。

門司港 干物屋じじや

 門司港では「干物屋じじや」を経営する秋武政道様にお話を伺いました。 秋武様は門司港レトロエリアのマスコットキャラクター「バナナマン」のモデルとして盛り上げ役を担う  入店時に干物を試食させていただきましたが、それがビジネスにとって大きな意味を持つことを秋武様は解説します。他にも購入時にプレゼント応募を促す狙い、店頭購入者の何パーセントがどのくらいの金額を購入することでビジネスが成り立つのか、といった地方の小売店ビジネス最前線のリアルな話の連続です。  干物屋を出て門司港レトロ内のレストラン「MOJISHO」に移動。店内の韓国、台湾からの団体客の多さにインバウンドの風を感じ、門司港名物「焼きカレー」をランチにいただきながら、秋武様のお話の続きを伺いました。  30年前から町づくりに携わり、青年会議所とは異なるスタイルを模索して「会費なし、規則なし、名簿なし」を合言葉にBBS、mixiなどを経てSNSを使った「クラウド型街づくり」にたどり着いた秋武様。  「町の若者が新しい事業を始めるときに、いちばん困るのは事務局を設けて固定電話を引き、マスコミ対応すること」「地方の事業は行政や警察との連携が不可欠。実行委員を意図的に毎年交代させ、10年かけて10人育てれば、町の外に出てしまう人材が出ても必ず数人は残ってキーマンとして育っていく」「ここに来れば夢が叶うかもしれない、と最初の段階で感じさせることで人が育つ」といった、長年の経験から紡ぎ出された地方創生の実践ノウハウに参加者一同は聞き入りました。

門司港 MOJISHO

 続いては関門観光企画営業担当者会議事業部会部会長として、関門海峡を挟んだ門司港と下関の観光業者をネットワークし、旅行会社への提案活動をされている巌洞秀樹(がんどう・ひでき)様のお話です。 レストラン「MOJISHO」のオーナーでもある巌洞秀樹様  福岡県(門司港)と山口県(下関)のように、異なる県の観光業者が連携してるのは日本ではとても珍しいケースだそうです。巌洞様は門司港の観光スポットを回遊する仕掛けを組み込んだ謎解きゲームや、防災訓練をエンタテインメント化するアトラクションなどを独自に企画されています。  中国、台湾、韓国などアジア圏へのアクセスが抜群の門司港で築き上げたインバウンド観光ノウハウも巌洞様からふんだんに共有していただけました。  「インバウンドの良いところは日本とオンオフシーズンが被らずに通年ニーズがあること」「現在でも福岡港で年間300隻、下関港で100隻という中国からのインバウンドを受け入れている。将来的に南アジアの周遊クルーズの日本起点が門司港になる予定があり、門司港がアウトバウンド(日本人の出発拠点)として賑わうようになる。現在インバウンドで培った観光ノウハウを国内客に向けて活用できるようになる」といったビジネスヒント満載のお話を伺うことができました。

門司港の商店街や施設を視察

門司港レトロエリアを後にして、門司港駅周辺の商店街を散策 昭和6年建造といわれる料亭の姿が現在も保存されている三宜楼 海を隔てた下関と門司港は、同日に花火大会を開催するなど観光連携を行っている

小倉 林田酒店

 電車に乗って小倉に戻り、駅前の林田酒店を訪問。角打ち体験をしながら、林田直子様のお話を伺います。 林田酒店の林田直子様  江戸から続く酒蔵の孫として日本酒の豊富な知識をお持ちの林田様は、アメリカの大学院を出てシリコンバレーでのキャリアを持つ一面もあり、英語でインバウンド客に日本酒の解説をするスキルをお持ちです。  麹菌が樽の中で糖を食べる程度を杜氏(とうじ)が職人の勘でコントロールして日本酒の味を決めている、といったエピソードは「酒造り」を知り尽くしている林田様ならではの貴重なもの。  林田様が解説する新酒会(蔵開き)イベントの様子は、お酒、グルメ、音楽、交通、ホスピタリティの隅々まで酒造とファン双方の愛情があるからこそ成立していることが伝わり、聞いているだけで今すぐ行きたくなるような魅力に満ち溢れていました。イベントのインバウンド展開や、アジアからの富裕層の動向、アジア圏での日本酒販売についても貴重なお話を聞かせいただきました。

おもてなし規格認証

 林田酒店を出た後は、小倉駅前の魚町商店街を散策し、拠点のコワーキングスペース秘密基地に戻ります。初日の最後のセッションは渋谷健による「おもなし規格認証」の解説です。  サービス産業の生産性向上の実現に向け経済産業省が創設したこの規格は、企業や店舗のサービス品質の「見える化」を行うためのものとして紅・金・紺・紫の4種類の商品を受けることができます。  認証を取得すると政府系金融機関からの低利融資が受けられるほか、九州ではメディア施策としても展開しておりプロモーションでの活用も可能になっています。  生産性向上のためには効率化だけでなく、事業成長・収益力強化も必要です。そのためにバズ(話題)を生み出して維持することが重要、という地方創生の最前線で活躍する渋谷による総括的なセッションでローカルツアー九州の初日が終了。  最後は秘密基地名物のお食事をいただきながら、岡様も交えた地方創生ディスカッションで盛り上がりました。

2018年1月26日(金)福岡市編

「かせぐまちづくり」についての意見交換

 DBIC地方創生研究会、九州ローカルツアーの2日目は舞台を福岡市に移します。会場となる冷泉公民館に集合し、午前中は地域の経営者の皆様、福岡市スマートシティコミュニティの皆様と合同で、研究会のテーマである「かせぐまちづくり」の仕組みを考えます。  DBICディレクター渋谷は「かせぐまちづくり」の実現のため、地方創生研究会のPR動画でもご紹介した、民間主導で「地域をけん引する経営者コミュニティ」「プロ人財ネットワーク」「地域金融」の3者をつなぐスキームを提案していきます。  宮崎県日南市、北九州小倉市などで成功したモデルを渋谷が体系化したこのスキームをDBICメンバー企業の参加者がどのように活用し、地方創生の成功事例に結びつくか期待が高まります。

福岡市 被災訓練プログラム体感(まちあるき)

 昼食を挟み、地方創生研究会のキックオフイベントでもご登壇いただいた危機管理のスペシャリスト、浅野竜一様(一般社団法人Project72理事/株式会社ZOAS代表取締役)による被災訓練のセッションです。 浅野竜一様(一般社団法人Project72理事/株式会社ZOAS代表取締役)  冒頭に参加者がふたり一組となって、路上で暴漢につかみかかられた際の対策シミュレーションを行いました。人間が直感的に考えてしまう反応がかえって危険につながる「意外性」のレッスンに一同「なるほど!」な体験となりました。  従来は美徳とされていた「共助」に対して、東日本大震災後に当たり前に使われるようになった「自助」も「意外性」のひとつ。「ひとりひとりが助かることで全体の生存率を上げる」という視点から徹底的に自助を追求するのも今回のセッションの目的のひとつです。  確証バイアスを乗り越え、評価軸を変える。新規ビジネスやイノベーションと同じ取り組みが危機管理にも求められます。東京都による東日本大震災当時の行動のアンケート結果を分析しながら「震災時の行動の間違い」を探していきます。窓を開けるのは正しい? 歩いて家に帰るのは正しい? 家族の安否確認は正しい? 本当に重要なテーマは災害の発生から最初の72時間に「被害の拡大を軽減する」ことだと浅野様は説きます。  セッションの最後は避難所運営を想定したアドベンチャーゲーム風のクイズゲームが開催されました。極限状態で求められる選択肢が次の質問に影響を与え、きれいごとでない「自助」の判断こそが結果的に「共助」につながることを参加者一同が体験して、福岡市を舞台にした危機管理プログラムが終了しました。 福岡市「ゆれやすさマップ」「防災マップ」を手に、チームに分かれて災害時の避難経路を意識した街歩きを行いました

オボルドーフクオカにて意見交換会

 2日間にわたったDBIC地方創生研究会ローカルツアー九州の締めくくりはフランスのボルドー市と福岡市の姉妹都市事業の拠点として設立されたワインバー「オボルドーフクオカ」での意見交換会。  ツアーの内容をふまえた地方創生事業への落とし込みついて、DBICメンバー企業からの参加者の皆様、福岡市の皆様、福岡の経営者の皆様を交えたディスカッションが深夜まで続きました。  2018年2月には東北を舞台にしたローカルツアーを開催、そして3月には研究会全行程を総括する成果発表会が予定されています。

関連リンク

イベント告知ページ【レポート】DBIC地方創生研究会「ワイガヤセッション #2」【レポート】DBIC地方創生研究会「ワイガヤセッション #1」

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