【レポート】ELEKS:次世代SIがDXとデジタルビジネス・イノベーションを推進する

近年になってDX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉がやっと浸透を始めた日本に対し、既に欧米では実行フェーズが進んでいます。本プログラムは、従来型のオフショア開発の委託先としてではなく、価値創造のパートナーとして最先端を進むELEKSの開発スタイルやビジネスモデルを通して、日本企業に必要なマインドセット変革を学ぶことができました。 講師を務めたのはELEKSアドバイザーの田井 昭様、北米支部長のDave Pacanowsky様、R&D部長のYuryev Vitalii様。加えて日本企業の共同開発事例として、DBICメンバーの大日本印刷と野村総合研究所からもプレゼンテーションをしていただきました。本レポートでは講演内容を再構成してお伝えします。

SoRとSoEの両方に対応するビジネスパートナー

田井 昭様(ELEKSアドバイザー / 元コニカミノルタ執行役員 / IoT Link Labo 代表) 田井:ウクライナ発のグローバルIT企業、と言われても日本の皆さんには馴染みがないかもしれませんが、ウクライナは欧米では伝統的にオフショア開発の中心地であり、なかでもELEKSはアメリカのIT評価サービス「Clutch」で最高評価を受けています。 近年、従来型の企業内システム開発である「SoR(System of Record)」と、顧客との高速なエンゲージメントに注力した「SoE(System of Engagement)」という概念が流行りましたが、ELEKSは28年の歴史を通してその両方に対応しつつ、本質的な意味でのアジャイル開発を実行している稀有なIT企業です。 日本企業がやってきたオフショア開発は、要件定義したら開発は丸投げし、半年や一年後の納品を待つ、というスタイルが中心でした。一方、ELEKSはクライアントと共に課題に対するソリューションを考えて、アジャイル開発でどんどんPoCをつくっていきます。このスピード感のグローバルスタンダードを体感できるのが、日本企業がELEKSと組む最大のメリットのひとつでしょう。 スマホのアプリやクラウドサービス単体であれば、日本にも優秀な企業はたくさんあるでしょう。しかし、エンタープライズモデルでSoRからSoEまでワンストップでソリューションが提供できるIT企業は、なかなかありません。 更に、ELEKSならカメラやセンサーやモーターと言った日本企業が得意なデバイスコントロールや組込から、バックエンドシステムまでカバーできます。ELEKSは日本企業が協業し、共に成長できるビジネスパートナーなのです。

ELEKSが他のソフトウェアベンダーと差別化できている点

Dave Pacanowsky様(ELEKS 北米支部長) Pacanowsky:ELEKSが他のソフトウェアベンダーと差別化できている最大の点は、優秀な専門人材を多数抱えている点と、多様な業種や技術における課題解決の経験値です。 企業のサイズ感としても、グローバルに高品質なサービスを提供できて、なおかつ個々の案件の細部まで目が行き届く規模を維持するように心がけています。 そしてもちろん、アジャイル開発による圧倒的なスピードには自信があります。これについてはアメリカの有名な投資家ウォーレン・バフェットの言葉を引用させてください。 ある日、バフェットが投資家から「どうしてシステム開発は利益を生むまでこんなに時間がかかるのか?」と質問されました。それに対して彼は「妊婦さんを9人集めたからと言って、出産までにかかる時間が1ヶ月に短縮されることはありません。絶対に9ヶ月かかるものなのです」と答えたそうです。 この例で言えば、ELEKSは4〜5ヶ月くらいまで短縮するお手伝いができます。

コンサルティングからプロトタイピング、マーケットテスト、製品化まで

Yuryev Vitalii 様 (ELEKS R&D部長) Vitalii:ELEKSは約30年前にソフトウェア開発会社として起業し、約20年前にはグローバルな受託開発ビジネスに転換しました。技術を売って対価を得るようなビジネスを続けていましたが、近年になってそれでは本当の意味での成長にはつながらないことに気づき、クライアントのパートナーとして包括的なソリューションを提供するモデルに切り替えて現在に至ります。 世界11箇所に開発拠点があり、約1,400人のスタッフのうち、82%がエンジニアです。プロジェクトマネージャー、プログラムマネージャー、ビジネスアナリスト、データサイエンティストなどから構成されています。 ELEKSでは小売、物流、銀行、保険、エンターテイメントなど世界中の膨大な業種の企業と仕事をしたノウハウを蓄積しています。どこかで開発したソリューションを、可能であれば他のプロジェクトで水平展開することもあります。 クライアントに最適化したチームをフレキシブルに編成するのも私たちの特徴です。プロジェクトマネージャーを中心に、ビジネスアナリスト、データサイエンティスト、品質管理、デザイン、カスタマーサポートなどの専門職をプロジェクトに応じてピックアップします。 他のITベンダーとの差別化として、コンサルタント&アドバイザリーの機能を持っている点が挙げられます。ELEKSのプロダクトデザインチームは、クライアントが持ってくる初期段階のアイデアレベルの案件を、具体的なプロダクトにまで落とし込むことに特化しています。なお、ELEKSのデータサイエンティストチームは、ウクライナ最大規模です。

このビデオに挙げられたELEKSの開発事例は、最初はアイデアレベルだったものを、ELEKSがクライアントとディスカッションしながら、プロトタイピングを繰り返して、製品化したものです。 イノベーションにはスピードが必須で、アジャイルは協力な武器になります。ウォーターフォールで1年かけて開発した製品がマーケットに出るころには、もう時代が変わってその製品は求められていない、というのが当たり前に起きてしまうのです。 欧米でもクライアントの多くは「アイデアはあるけれど、それに実効性があるかわからない」という状態でELEKSを訪れます。私たちはそのアイデアをベースに仮説を立てて、リサーチし、プロトタイピングをして、マーケットでテストする、というサイクルを繰り返すとことに責任を持って対応します。 イノベーションにはアイデアと実装の両方が必要で、私たちはその両方をお手伝いできます。

大日本印刷の事例:リモートでのアジャイル開発への手応え

矢野 崇様(大日本印刷 / 情報イノベーション事業部) 矢野:2019年に大日本印刷(DNP)がリリースしたスマートフォン用アプリ「DNPソーシャルアクションサービス May ii(メイアイ)」をELEKSと共同開発しましたので、事例としてご紹介します。 前身となったアプリ「&Hand」もそうですが、サービスの目的は、旅行者やお年寄り、そして妊婦さんのようなサポートが必要な人と、偶然近くに居る「助けてもいいよ」という人をマッチングさせることです。 屋外でのGPSと室内でのビーコンを使った位置情報の統合など、マッチング機能のPoCのためにELEKSと協業のトライアルを実施し、同社の技術力とマネジメント力を評価しました。 開発のスタート時点で、ELEKSからR&D、UXデザイン、エンゲージメント、開発、デリバリーなど11名の専門家がミーティングに出席してきたのに驚きました。DNPからは「自然に他者を助けられる社会」というビジョンと、簡単なユーザーシナリオを提供しただけで、敢えて機能の話はしませんでした。機能はELEKSとのディスカッションを通して決まっていくと考えたためです。 開発スタイルとしてはDNPでもアジャイルを採用していたので、2018年の11月から1月の間に3回スプリントを回す、ということで合意しました。後は日本とウクライナの間でリモートによる定例会議をしながら、JIRAやConfluence、チャットを使ったやり取りを続けました。 感想としては、まずはとにかくスピード感がありました。ディスカッションを終えて数時間すると、内容が整理されてタスク化されているイメージです。ソースコードの保守性も高く、日本とウクライナのリモートでアジャイル開発は十分できると実感しました。 また、スクラムは世界共通言語なので、ELEKSのマネジメントにもストレスはありませんでした。担当者のアサインもELEKS側で柔軟に行ってもらえて、高いレベルで自律的に新しいソリューションを提案してくれました。 最終的に最も課題になったのはDNP側の英語力ですね。通訳は入っていましたが、すべてのコミュニケーションに対応してもらうのは難しいので、少しでもこちらの英語力が上がれば効率化につながります。また、日本流のオフショア開発ではなく、ビジネスパートナーとして学びの精神を持ってELEKSに向き合うことで、こちらのベネフィットも最大化できると感じました。 センサーデバイスからエンタープライズ、エンターテイメントまで一気通貫で対応できるELEKSのようなIT会社は、少なくとも日本にはなかなおらず、貴重な存在だと思います。

野村総合研究所の事例:価値発見・創出活動のパートナーとして

国府 新様(株式会社 野村総合研究所 データセンターサービス本部) 国府:野村総合研究所(NRI)とELEKSの協業において、私たちは「ELEKSから学ぶこと」を第一目的に設定しました。実テーマとしては、私がクラウド関連の部門に所属していることもあり「クラウドネットワーク障害時の影響最小化」を設定しました。その中でも、上流の要件定義(Discovery Phase)にフォーカスしています。 スケジュール的には2018年の4月に2週間ほどウェブ会議で要件整理をして、5月初旬にELEKSの皆さんに1週間ほど来日していただいて集中会議し、その後ウクライナに戻って2週間ほどでまとめていただく、という流れでした。 日本での集中会議では、午前中に打ち合わせすると午後にはテーマが整理されたペーパーが出てきました。それを元にホワイトボードでディスカッションして、30分ほど休憩すると、もう先程の会議の内容を反映してテーマがアップデートされている、というスピード感です。 実質2日後には動くプロトタイプを見せてもらえました。それに加えて「こういう観点でバリューアプした方が、お客様に受けるのではないか?」という提案がどんどんELEKSから出てきます。プロトタイプを動かしながら検討できるので、ディスカッションも活性化されます。私たちが経験してきた従来の国内&オフショア開発とは全く違う体験でした。 振り返ってみると、ELEKSと協業することで「NRIはどう変われるのか?」を問われているのだと気づきました。私たちはどうしても「UIのこの部分を改善する」といったレベルの「How」から入ってしまいがちですが、ELEKSは「What(=お客様に提供する価値は何なのか?)」を最初に問うてきます。そこさえ明確になれば、今度は彼らの視点で新しい付加価値を提案してきてくれるのです。 また、こちら側の体制として「持ち帰り検討や合議制」から脱却する重要性も学びました。特に上流をやるならば、専任で意思決定ができる体制にしておかないと、せっかくのELEKSの圧倒的なスピードを活かせないことになります。 従来型の「改善アプローチ」であれば、一般的なオフショア開発で充分です。しかしながら、今後日本企業のValueUPに向けては、新たな「価値発見・創造アプローチ」が必要です。NRIだけでなく、日本のSIerは、ELEKSのような会社と「価値発見・創出」活動にチャレンジしていくべきだと感じました。

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DBIC代表 横塚裕志 DBIC副代表 西野弘 大盛況となった会場の模様

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