【横塚裕志コラム】社会課題と言われても腹落ちしません

「私たちが忙しく本業で苦労しているのに、社会課題に取り組めとは意味が分からない。どういう趣旨でしょうか。」と質問されました。もっともな問いであり、私の想いを書いてみました。 私たちDBICは「企業が本業のビジネスとして社会課題の解決に取り組むべし」と考えていて、その理由は大きく3つあります。

1. 情報の非対称性の逆転

21世紀に入りインターネットの普及などで一般の方にも多くの情報が簡単に手に入るようになりました。 企業が販売している商品に関する情報について、今までは当然ながら販売している企業側の方が情報を持っていて、顧客は持っていませんでした。その情報量の差を説明することで販売という仕事が機能してきたのです。 しかし、今の時代はそれが逆転して顧客の方がメーカーより多くの情報を持っている状態になっています。商品比較のサイトもあればSNSなどでの情報もあります。 顧客側がイニシアチブをとって自分の価値観に合う商品を選ぶ時代になったわけです。セールスマンより顧客の方が詳しいので、セールスという機能は発揮しにくくなっています。顧客にとって真に価値が高い商品が売れるのです。 したがって、企業は顧客が真に価値を感じる商品を開発することで生き続けられます。企業自身の強みを生かした商品、とかいう企業側の論理では通用しない時代になりました。そのことをさらに追求していけば、市民の多くが欲しいモノ、市民の多くが困っていること、それは、社会課題の解決そのものに行きつきます。そこに、マーケットが存在するというわけです。

2. 株主第一主義の限界

今年のダボス会議でも「マルチ・ステークホルダー・キャピタリズム」というテーマで、脱・株主第一主義が議論されたようですが、20世紀に全盛を極めた株主のための企業経営という考え方に限界が見え始めています。 企業は株主のために、株価を上げていくこと、売り上げを大きくしていくこと、利益率を上げていくことが至上命題になっていて、経営者の判断はこの3つの指標が中心となってやってきました。 しかし、営業目標への過度な偏り、そのための長時間労働、品質に関わる不祥事など問題は大きくなってきています。加えて、そのような経営ビジョンではついていけないという若者が増え、2,30代の若者の離職率が急激に上がり始めています。 そして、株主第一主義の次の経営理念として、ステークホルダーは株主だけでなく顧客や市民、従業員であるという考え方が生まれています。これが、まさに社会の価値創造を経営の柱とする考え方であり、この考え方が世界では浸透し始めています。本来の企業の存在意義は何か、を問えば、それは株価・売上額ではなく、社会に何を貢献しているか、であり、それを実践するのが、ビジネスとして社会課題を解決することです。

3. 人類の危機が迫っている

国連での2015年のSDGs宣言では、「社会課題が山積しビジネスの力でこれを解決しないともう解決できない状況に追い込まれている。2030年までに全世界の多くの機関が努力しないと人類の危機が迫っている」とメッセージしています。 今、社会課題をビジネスというエンジンで解決することは私たちの義務であり責任であり仕事であるということを強く打ち出しています。社会課題はビジネスとは縁遠い存在だったという時代は過ぎ去って、私たちの責任だという意識が求められているのです。それも17の課題全部を考えろ、というのが至上命題。経営者の意識も社員の意識も大きく変えていく必要があります。SDGsのカラフルなバッジをつけて歩けばいいという問題ではありません。人類存亡の危機なのです。 以上が3つの理由で、今、全産業が大きな転換期に立っているというのがDBICの世界観です。 と申し上げても、皆さんはそんなことを言われても・・・という感じだろうと推測されます。「毎日の仕事とはかなり距離感があるテーマであり腹落ちしない。会社の中にそういう雰囲気はない。一人で頑張れる状況にない。」 しかし、皆さん、今までのやり方に限界が見えているのも事実ですよね。このまま10年先も同じやり方で繁栄しているのでしょうか。ぜひ、そこを継続して考えて欲しいというお手紙を渡しておきます。

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