スイスのビジネススクールIMDが、世界競争力ランキング2022を6月15日に発表した。1位デンマーク、2位スイス、3位シンガポール、4位スウェーデンで、日本は34位と低迷している。1位から4位の4つの国は、DBICが年初に発行した「VISION PAPER 2」で特集した4つの国そのものであった。彼らの競争力は持続的で本質をついているものだということが証明されている。日本は、2020で34位、2021で31位、2022で34位と低迷している。
日本経済新聞の6/15付ニュース「世界競争力、デンマーク首位 日本は過去最低の34位」に投稿された二人のコメントを紹介する。
まずは、ニッセイ基礎研究所・伊藤氏のコメントだ。
「IMDの世界競争力ランキングは「経済パフォーマンス」、「政府の効率性」、「ビジネスの効率性」、「インフラ」の4つの領域の5つの項目のランキングもあり、どの項目の評価が低いのかがわかる。日本は、経済パフォーマンスが20位、インフラが22位だが、政府の効率性は39位、ビジネスの効率性に至っては51位という低評価だ。 政府の評価を押し下げている項目は「財政」の62位だが、ビジネスの効率性では「生産性・効率性」、「経営管理の慣行」、「(グローバル化や新たな課題などに対する)態度や価値観」が60位前後。コロナ禍からの回復の遅れという一時的問題にとどまらない、構造面への厳しい評価と受け止めるべきだ。」
次に、フューチャー社の社長で政府の委員を務められている金丸氏のコメントだ。
「10年前にデンマークを訪問した。財務省配下のデジタル庁長官から政府の戦略を伺った。もちろん、長官は女性。高負担を国民に強いるので、政府のサービスは国民満足を目指しているとの明確な説明。オンライン医療、オンラインリハビリテーションの実例も体験し、驚くばかり。文科省の方には小中学一貫校を案内してもらい、1人1台のタブレット端末を使うデジタル教育の先生と生徒のやり取りを見て、日本の子供たちの将来に強い危機感を抱いた。帰国して政府に提言し続けた。我が日本は、コロナ禍で漸くオンライン医療解禁。プログラミング教育、オンライン教育も始まったばかり。追いつくには、トップランナーより早いスピードが必要不可欠。」
私の問題意識はこうだ。日本がずっと低迷していていいのか、特に、ビジネスの効率性が63か国中の51位でいいのか、恥ずかしくないのか、ということだ。さらに言えば、ビジネスの効率性のなかでも、「生産性・効率性」、「経営管理の慣行」、「(グローバル化や新たな課題などに対する)態度や価値観」が60位前後という最下位でいいのか、改善に向けて動き始めた方がいいのではないか、ということだ。1位のデンマークは、残業無し・6週間の休暇で一人当たりGDPが日本の1.5倍、平均年収も日本の1.5倍だ。
しかし、私の知る限りでは、日本のビジネス界で生産性・効率性についての本質的な議論が行われているとは思えない。また、金丸氏が政府委員として政府に提言し続けていただいているようだが、政府の動きが遅いうえに本質的な議論が見受けられない。日本の企業や政府に危機感がないのはなぜなのだろうか。当面倒産するリスクはないので明日の会議のことで頭がいっぱいなのだろうか。今まで通りのやり方でぼちぼちやっていけばいい、という感覚なのだろうか。しかし、国力の低迷が国民の幸福度も下げており(世界幸福度ランキングで54位)、放置しておくわけにはいかないのではないだろうか。
私たちは、昨年「VISION PAPER 2」を作成する中で、上位を占める4つの国の戦略について調査を開始した。そして、今年はそれをさらに深めることで日本のキャッチアップ策を考えたいと願っているが、一緒に考えたいというお声はいただけていない。
日本だって頑張っているのだからこれ以上は無理、とか、生産性の測り方がおかしいのであって、日本品質は永遠なんだ、とか、私は生産性の担当ではない、とか、自分ごととして考えている方が見当たらない。
日本を何とかしたい、と心の底から思っている方々と、日本の弱点がなぜ生まれているのか、今までの経営をどのように改革すると生産性が上がるのか、などの議論をIMDの方や4つの国の方々を交えて始めたいと、切に思う。
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