【横塚裕志コラム】BE AGILE ビジネスの競争優位性を築く

1.「東京海上維新」をビジネスアジャイルで実現
ビジネスの競争で勝つためには、お客様が評価する新商品を開発し、お客様の価値を創造しなくてはならない。しかし、それを実現することは簡単ではない。
そこで、従来の経営の意思決定の方法論を改革し、仮説をまずお客様に評価していただき、その反応をもとに経営で意思決定し、マーケットで実践する、という新しい方式に変革しつつある会社がある。その新方式が「BE AGILE」だ。アジャイルと言っても、システム開発ではなく新商品の開発方式だ。

DBICの企業変革実践シリーズで、東京海上日動火災保険株式会社の村野剛太理事が講演でこれを語ってくれた。新商品の開発やお客様のプロセス改革を行うビジネス行動の優位性を高めるために、「BE AGILE」という戦略を2019年から始めている。ビジネスの企画から実践までを、仮説検証・意思決定・実践という新方式に改革している。
凄いのは、経営陣が本気だということ。村野氏が社長に1対1で2時間レクしたそうだ。社長の時間を2時間も取れるなんて奇跡だ。他の役員全員にレクした上で、ビジネス部門全体で進めている。営業部門にも広げている。

新商品やプロセス改革のプロジェクト単位にONE TEAMにして、ビジネス部門がプロダクトオーナーとなり、システム開発のメンバーを入れた同一チームにしている。同一チームで、ビジネス担当とシステム開発担当とが密なやり取りをしながら、お客様からのフィードバックをベースに、ビジネス開発を実践している。成功の秘訣は、AGILEの12の基本原則を全部やり遂げることだと語る。全部やらなくてはだめだと強調する。自己流はだめだと。そのために、外部のコーチに正しい行動フレームワークを学びながら実践しているそうだ。

真っ向勝負の改革に感動させていただいた。その勇気と努力は並外れたものに違いない。大きな成果が出ることを願ってやまない。

2.「維新」を加速するために・・・私の提案
村野氏も語っていたが、明治維新がそうであったように、「維新」は一人の英雄が成し遂げるものではなく、多くの市民がそれぞれの立場で変革に取り組むことで実現できる。従って、私は今まで以上に維新を背負う社員一人一人の「マインドのありよう」が大事になってくるものと感じた。

一方で、大きな伝統のある企業に共通しているマインドの問題点を私たちは痛切に感じている。
① 所属している組織の論理に従うこと、組織の上司の指示は絶対、という常識に依存している
② 過去の自分の常識・会社の常識・業界慣行、自分の成功体験・会社の成功体験に依存してしまい、自分の認知の枠を外して物事を白紙で見ることが不得意

大企業の社員の多くは、この「洞窟住まい」と「認知の枠」という内面に棲みつく二つの幽霊の魔術にかけられている。この魔術は限りなく視野を狭め、思考を止めている。この魔術を解いて目を覚まさない限り、今までの枠を超えたビジネスの発想、チャレンジは難しいのではないかと考えている。
この魔術を解くためには、3か月くらいの期間をかけたトレーニングとコーチングが必要と考えて、DBICでは三つのプログラムを用意している。
トランスパーソナル:
 自分が洞窟にいることを認識して、自律するマインドを持つ。
UNLOCK QUEST
 自分自身のあり方を深く探求して、「自分ごととしての変革」マインドを形成する。
UNCHAIN QUEST
組織の変革に焦点を当て、組織の変革に向けたアクションを描き、動かす。

鬼に金棒という意味で、3つのプログラムの活用を考えてみてはいかがかというのが私の提案だ。AGILE的に、一人でも二人でも試してみて評価していただき、そのあと本格採用するかどうかを意思決定していただければいいのではないだろうか。

参考

「ビジネス・アジャイル〜WEB 3.0 これからの時代に求められるワークハピネス DAOなチーム作り」2023年度上期 開催

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