【横塚裕志コラム】新型「イノベーター」が 大企業に生まれ始めている

イノベーション(DX)は、イノベーション室を設置したからできるものではない。イノベーターという人物が、イノベーションを起こし引っ張るから実現できる。そのイノベーターに新型が出てきた。実に爽快で胸躍る。

従来は、「伝説のCDOが〇〇社の改革をリード」という感じだったが、新型は違う。「やりたいことがある人は、仲間になって、何かやってみないか」というノリとか、「担当でも何でもないけど、こんなことやってみようと思うので仲間にならないか」というノリだ。やりたいことをやりたい、と目覚めた人が、やりたいことがあるけど胸の奥に秘めていたという人を仲間に引き入れていくという感じ。草の根的というか、若い芽が吹いていく感じというか、自主的というか、とにかく新鮮な感覚で楽しい風が吹き始めている。
この感覚を得たのが、7月10日に開催されたDBICイベント・企業変革実践シリーズ「会社は僕たちの手で変えられる!」で語ってくれた30代の新型イノベーターの姿だ。昨年度のQUESTプログラムを卒業した富士通の桑岡さん、東京電力の鷹觜さんがご自分のストーリーを語り、大日本印刷の片山さんがそれをファシリテートしている。そのお話の内容は「活動レポート」に譲るが、私が感じた「新型イノベーター」の特徴を書いてみたい。

  • 職制ではなく、仲間を集めて始めている
    組織の業務だからとか、上司に言われたから、ではなく、自分がやりたいことをやりたい人を集めて始めている。
  • 変革モチーフはやりたいこと
    大上段に構えた会社の問題解決とか社会課題解決ではなく、自分がやりたいことから始めている。しかし、その取り組みが共感する仲間の手で育てられていくうち、大きな課題にたどり着き、変化する慣性がその成長をドライブし、その大きな課題までも解決していくことになる。
  • テーマが小さく見えるけど
    始めたテーマが一見小さいことに見えるが、次第にその動きが大きくなっていく。共感という波は、まさに「バタフライ効果」のように、大きなコトに成長していく。
  • イノベーターが常に先頭を走る
    企画だけして場をつくりあとは頑張ってね、というモードでは成功しないと言う。プロダクトの責任をイノベーターが持ち続け、常にチームの先頭を走ることで、プロダクトが大きなものに化けていくし、いくつものハードルを越えていける。POCのような単なる試行では、大化けしないということだろう。
  • うまく進まないと悔しい
    悔しい気持ちがイノベーターには強い。10個ハードルが立ちふさがっていれば、10個乗り越えてやるという気持ちが強い。その気持ちが、思いもよらぬ解決策をひねり出す。
  • 大企業のリソースを活用する
    大企業が保有している人材、多くの機会、大きな資産を有効に活用する知恵さえあれば、大企業が持つ多くのハードルよりも利用する価値の方が高い、と考えているようだ。
  • QUESTプログラムで目覚めた
    3人ともに、ハードなQUESTプログラムに参加したおかげで、自分が大きく変容されて、やりたいことをやるという強い気持ちが持てるようになったと語っている。自分が変容することで、組織や上司に縛られない自分のための活動に目覚めたようだ。
  • その声は力強く、姿勢は謙虚
    泥臭くやるしなかない、という言葉に不退転の覚悟を感じる。一方、「オレがオレが」という昭和の香りはなく、仲間でやって行こうという謙虚な姿が清々しい。

まだまだ他にもQUESTプログラムの卒業生は大勢いる。それぞれが会社に戻り、「自分たちの手で変えられる」という自己変容を土台にして、それぞれの活動を行っているのだろう。うれしい気分だ。
あとは、それぞれの会社の部長・役員クラスが、彼らのパワーを生かすか殺すかを握っていると思われる。しかめっ面をして「大丈夫か?」と聞くのか、笑顔で彼らの可能性を信じて応援するのか、さあ、どうする。

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