この2、3年で、私個人の身の回りのことが企業側の要請でデジタルに変わり始め、あまりいい感じがしていない。例えば、以下のことが起きている。
ここに書いたことは、70歳を過ぎた老人のたわ言に過ぎないが、紙よりオンラインが地球のためには良いとは理解しているし、デジタルで便利になったということも否定はしないが、しかし、結果として、企業と顧客との距離は近くなっているようには思えない。むしろ、距離が遠くなっていると感じる。これでいいのだろうか。
私個人の感覚とは言え、デジタル化が企業と顧客を遠くしているようでいいのだろうか、というのが私の問いだ。 上に書いた事例から読み解くと、電気料金にしろ、保険証券にしろ、銀行手続きにしろ、企業側から見ると「事務処理」であり、コストを下げる対象であり、紙を削減する対象だ。だからそれを済々と執行しているという感じに見える。 しかし、企業側から見ると「単なる事務処理」でも、顧客側から見ると「大事なこと」なのだ。お金を払って得た商品そのものが、デジタルという見えにくく遠いものになっていることに不安を覚えているのだ。顧客に不安を与えていいのか、という問題だ。企業側はシステムをSoRとSoEとに分けて考えている風潮があるが、顧客にとっては、システムそのものが商品の一部を構成しているのであり、事務的とかという区別はなく、すべての体験が商品なのだ。だから、顧客の体験をもっと注意深く考えることが必要だと思う。
デジタル化はぜひ推進すべきテーマであることは間違いない。しかし、実施するにあたっては、以下に書くようなデジタルが持つ特徴をよく理解したうえで取り組まなくては効果が出ないように思う。やみくもにデジタル化してしまうと、かえって逆効果で、企業のブランドを下げてしまう結果になりかねない。
(1)顧客にとってのデジタルの特徴
(2)企業にとってのデジタルの特徴
顧客と直接つながることができる絶好の機会ととらえることができる。それは、逆に顧客側から見ると、デジタルによる顧客ジャーニーがすべて商品の一部を構成してしまうということだ。だから、うまく顧客体験がつくれれば成功だし、嫌われたら顧客を失うリスクもある。 そこで重要な視点は、紙をデジタルに置き換えるだけではデジタルの意味がない、ということだ。小学生の教科書を単にデジタルにしただけでは、学びの質は変わらない。個人別のきめ細かい指導を可能する、とか目的を持って新しい文化をつくることがデジタルの本質だ。 デジタルを使って、何を実現するのかの目的が重要だ。それは、その会社が「何の会社か」という本質的な問いへの答えをつくるようなものだ。自社の強みを徹底して押し出す戦略をつくってみてはどうだろうか。
他のDBIC活動
他のDBICコラム
他のDBICケーススタディ
一覧へ戻る
一覧へ戻る
一覧へ戻る