2月6日、7日、DBICのセミナーに世界で引っ張りだこの2人が駆けつけてくれた。一人は、DXの世界的権威であるIMDのマイケル・ウェイド教授、もう一人は、社会問題をデザインで解決する世界的権威であるデンマークデザインセンター前CEOのクリスチャン・ベイソン氏だ。二人は、DBICで初めての対面となり、あっという間に意気投合して、二人の対話は機関銃のようなスピードで止まらない。一流の人同士の対話を目の当たりにして、その音を聞いているだけで酔いしれた。こんな体験、二度とできないだろうという幸せ感に鳥肌が立った。
2日間のお二人のお話から、私が感じたことを何回かに分けてコラムに書こうと思う。第1回目が今回だ。 ウェイド教授が言う。「DXは難しいが、世界の企業で20%が成功している。その秘訣は、DXの基本に忠実に従って、戦略を立て実践していることだ。だから、今回もあらためて基本に戻った話をしようと考えた。」と。彼は成功率は5%だと語っていたので、世界では20%に上がってきているようだ。
ウェイド教授が主張する「DXの基本」は、以下の通りだ。
ウェイド教授の「DXの基本」は、元早稲田大学教授の根来氏が「対デジタル・ディスラプター戦略」の「解説」で書いている通り、「顧客への「価値提案」から戦略を考えるという思想」への大転換なのだ。デジタルはそれを推進するツールだ。 企業は、売上・収益計画、商品計画、予算計画などを年初に策定し、あえて言えば、売れると考える商品を企業の論理としてどれだけ売るかを決めて活動している。それを180度転換して、顧客の望む価値を感じつつ、顧客の動向に寄り添って、迅速に変化しながら活動するという思想に変えなさい、というのが「DXの基本」なのだ。計画や予算に縛られることが悪だという思想だ。
この基本に忠実に企業の行動を変えている日本企業があるだろうか。イベントやアワードでのDX事例を見ている程度だが、デジタル技術の使用例に過ぎないものが多いように見受ける。ウェイド教授が100%正しいとは言わないが、多くの成功や失敗の企業事例を世界レベルで収集し分析した結果の主張には重みがある。
IMDの世界競争力ランキングやデジタル競争力ランキングで日本が低迷している原因の大きなものが、ビジネスのアジリティが64か国の中で最低レベルということだ。基本の2に書いている「アジリティ」の高い組織になるということが日本では大きく遅れていることが明らかになっている。 王者「花王」が苦戦しているとか、あの「ワコール」が赤字か、というニュースを見ていると、顧客の変化に対応しきれていないという要因がマスコミで指摘されている。
「DXの基本」は、ウェイド教授が2015年に「DIGITAL VORTEX」を書いて発表したものだが、ますますその重要性を私たちが感じなくてはならない大事なものと改めて感じる。もっともっと、日本企業はこの基本を深く学ぶ必要があると思う。今までの成功体験を捨てなくてはならない。今まで通りの企業側からの発想でのビジネスは明らかに限界が来ていることを認識すべきなのだろう。
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