【横塚裕志コラム】日本企業のアプリは なぜ使いにくいのか ②想いをプロセスに

前回のコラム「日本企業のアプリはなぜ使いにくいのか ①その原因を探る」 を書きながら、原因は組織的なものだとわかった。従って、組織的に改善をすればいいということになる。そこで、「組織的なフレームワーク」を調べてみた。

Ⅰ.BABOKによるビジネスアナリシスのフレームワーク

IIBA元理事・KBマネジメントの清水千博氏のコラム「DXにおけるビジネスアナリシスの重要性」 から引用する。

  1. ビジネスアナリシスという業務
     以下を実施することとある。
    ①ビジネスニーズの理解 ②デジタルトランスフォーメーションの機会の特定
    ③デジタルソリューションの設計と最適化 ④ビジネスプロセスの分析と改善
    ⑤ユーザー体験の向上 ⑥リスク評価と変革管理
    ⑦パフォーマンス評価と改善 ⑧変革管理とリーダーシップ:
  2. 「⑤ユーザー体験の向上」という業務が以下のように説明されている

    「ユーザーの行動データやフィードバックを分析し、ユーザー(顧客)体験の改善につなげることが重要です。継続的なデータ収集と分析を行い、改善のためのアクションを実施しましょう。
    ユーザー(顧客)体験の向上は、ユーザーとの密なコミュニケーションとデザインの継続的な改善に基づいています。ユーザー(顧客)の視点を大切にし、ユーザー(顧客)が満足し、使いやすいソリューションを提供することを目指すべきです。
    そしてユーザー(顧客)に使ってもらって初めてソリューションの価値が生まれることを忘れてはいけません。どんなに素晴らしいソリューションであってもユーザー(顧客)が使わない限り価値は出ないのです。」

Ⅱ.ITIL4によるサービスマネジメントの考え方

ITIL はじめの一歩」(最上千佳子著)より以下に抜粋する。

「ITILが重視しているのは「お客様に価値を提供し続けること」であり、それがITILを貫く基本姿勢となっています。「お客様に価値を提供し続ける」と言葉で表現するのは簡単で、当たり前のことのように思えるのですが、実施するのは結構難しかったりします。 本当にそれがお客様にとって価値があるかどうかは、実は「お客様本人」しかわからないのです。ですから常にお客様に対して「これって喜んでもらえていますか?他にして欲しいことはありませんか」と問い続けなければなりませんし、お客様本人すら自覚していない「無意識の期待」にもアンテナを張り続けていなければなりません。・・・と考えると胸を張って自分はできていると言える人は案外少ないのではないでしょうか。
「お客様が今求めている価値」を提供するだけでなく、「何がお客様にとって価値なのか」を察知し、受け取れる仕組みを作っておかなければなりません。その際に必要となるのが「サービス」という考え方であり、サービスのマネジメントの成功事例をまとめたのがITILなのです。」

Ⅲ. 組織としての活動を「プロセス」として決める

二つのフレームワークを調べてみて思うのは、どちらも「お客様が求める価値」を提供することの重要性と、それを組織的に実行するためのプラクティスやプロセスの必要性を主張している。かなり同じ方向を向いている。この数年、BABOKやITILがバージョンを上げてきているが、どちらも「お客様が求める価値」をいかにして提供し続ける企業に変革していくかを重要視している。世界は、「おもてなし」という「想い」を具体的なプロセスとして定義し、それを組織的に実行することで実現していこうとしている。そしてそれが経営のアジリティにつながっているように見える。

私たちは、「おもてなし」という気持ちは十分持っているものの、実際に行われているサービスをお客様がどのような感覚で受け止めているかを計測したり、調査したりしていることがほとんどないように見える。「できるだけいいサービスをしている」と胸を張っても、実際どうかは聞いてみなくてはわからない。計測してみて初めて改善などのマネジメントが働く。お客様の価値観がどんどん変化していく今の時代、自社の製品・サービスを組織的なプロセスで「マネジメント」を行う経営に舵を切らなくてはならないのではないだろうか。その不足がアプリの使いにくさに象徴されているように思える。
そしてこの視点は、DXとか言う前に、「本業」を変革する意味で大きなテーマと考えるべきではないだろうか。

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