【横塚裕志コラム】戦略を実行するための「スキーム」と「高度な企画能力」~ベトナムレポート①

先日、ベトナムにあるコンピュータサイエンス専門のFPT大学に訪問し、常に世界最新の教育をするための施策についてお聞きする機会をいただいた。この大学は、FPTコーポレーションというベトナムのIT企業が経営する大学で、2006年に設立されている。今や、AI専門の拠点を含め、5か所の拠点を持つ。

1.世界レベルの学びを担保する「スキーム」

カリキュラムを4か月の学期単位でアップデートしているスキームがあり、それが以下の通りだ。

  1. プログラム・ディレクターが、世界の最新の情報を常に収集し、学びの内容について、その目指すものを規定する。
  2. それを受けて、シラバスを策定する専門集団が、学ぶための具体的な内容をデザインし、プログラム・ディレクターのレビューを受ける。
  3. 確定したシラバスの内容を教育できる先生を雇用し、実行する。

つまり、シラバスは先生がつくるものではないのだ。私の乏しい知識では、先生がつくるものだとばかり思っていたので、ぶったまげた。私が持っているイメージは、①「先生を採用」→②「先生がシラバス」をつくるという順で、そして、「先生の皆さん、できるだけ世界レベルで頑張ってください」と促す経営だ。それとは全く違うプロセスでFPT大学は経営している。
FPT大学の皆さんは、徹底して世界から学ぶ方針を貫いているそうだ。その結果、このプロセスを当たり前のようにして動かしている。たぶん、日本以外の欧米やインドの大学では、これが当たり前なのかもしれない。

2.「マネジメント」する「スキーム」とそれを執行する「高度な企画能力」

もし、世界レベルの教育をすることを目標に掲げたとして、先生に世界レベルの教育をするように「頑張ってください」と督励するスキームと、上記のスキームを比較した時に、どちらが合理的かは一目瞭然だ。
上記スキームの話をうかがったとき、これこそ「マネジメント」だとピンときた。「できるだけ世界レベルで」とか、「頑張ってください」とかいうスキームではその戦略が実行される保証はない。
何を学ぶ必要があるか、それをどのような構成と内容で実施すべきか、そしてそれを誰ができるのか、という役割を専門性を持った人が果たすことで、継続性や再現性が担保されている。これこそ、「マネジメント」だと感じた。
もちろん、このスキームを実行できる「高度な企画能力」が必要なことも大事なポイントだ。特に①②を執行できる能力が求められる。

3.これは大学の問題だけではない

この「マネジメントスキーム」と「高度な企画能力」は、大学の経営だけの課題ではない。企業にとっても同じ課題があるように思う。二つのことを書いてみる。

(1)企業内の人材育成のスキームのあり方
今までの人材育成のやり方は以下の通りではないだろうか。
① 世界で通用する人材を育成すべし、人材が資本だと経営が言う
② 人事部が、新入社員研修・10年目研修・管理職研修などの研修スキームに、何を加えるべきかを、研修会社と相談する
③ 研修会社が提案するカリキュラムを選んで実行する

上記の大学の例で考えると、以下のスキームであるべきではないだろうか。
① 世界で通用する人材とはどのような能力を持つ人材かをプログラム・ディレクターが世界レベルの情報を収集しながら企画する
② 実施すべき「学び」を誰を対象に、どのタイミングで、どのように実行するかを企画する
③ それを実践できる育成パートナーを探し委託する
この「スキーム」とこれを執行する「高度な企画能力」がなければ世界レベルの人材は育成できないのではないだろうか。

(2)DXへの取り組み方
例えば、以下のような取り組み方が多いように見える。
① DXはXのトランスフォーメーションが大事なんだと経営が言う
② DX推進室を設置する
③ 各事業部でDXと称するIT案件をIT部門に発注する

この「なるべくDX」というスタイルでDXが進むのだろうか。進まないとき、だれが責任をとるのだろうか。「みんな頑張ったからよし」とするのだろうか。
DXをどのように「マネジメント」するかが大きな経営課題と考えるが、みなさんはどのような「マネジメント」をされているのだろうか。

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