ベトナムのIT企業であるFPTコーポレーションを率いるビン会長と先日ランチしていた。ビン会長がこう切り出した。 「1年前から中国語の勉強を始めた。理由がわかるか?」 私は、66歳のおじさんの趣味かと思ったが、衝撃的な内容だった。 「ベトナムの国力を上げていくためには、半導体の製造に挑戦することが重要と考えた。そのために貢献しようと思い、米国や中国、台湾などを回って情報を収集している。特に、台湾のメーカーとの連携が必要と考え、自分が直接交渉しようと思い、中国語をマスターしようとしている。」ということだった。
すでにソフトウエア産業として、アジアだけでなく日本、米国にマーケットを拡大して大きな成果を上げ、ベトナムをソフトウエア拠点とすることに貢献してきた実績があるにもかかわらず、今度は「半導体」を手掛けるという強い意欲に驚いた。 「これからは、AIとそれを支える半導体が世界のテーマだ。これにベトナムが挑戦することで、ベトナムをより豊かな国にしたいんだ」。そのために「自分が自ら交渉にあたって台湾に学びたい」というギラギラした熱い想いに圧倒される。
ふと、ファーストリテーリングの柳井会長のインタビュー映像を思い出した。確か、テレビ番組で野球の栗山元監督との対話の中で柳井会長がこう語っているのを鮮明に覚えている。 「小さな成功をしてみてもつまらないじゃないですか。世界を変えてやろうと挑戦することが面白いんじゃないですか。」
お二人の共通点を二つ感じる。
「高い志」がエンジンとなって「常識」を覆し、イノベーションを生んでいる。逆に言うと。「高い志」がなければ、イノベーションは起こせない、ということではないだろうか。デジタル技術がそこにあっても、イノベーションは異質なものの結合だと知ったとしても、イノベーションを起こす熱情・パッションがなければその想いを実行できないのではないだろうか。事例を多く知ったとしても、熱情がなければ大きなハードルを越える力は出てこないように思う。 では、どのようにしたら「高い志」を持つことができるのだろうか。 7歳、4歳の孫の後姿を見て思う。このころはみんな天才でイノベーターだ。好奇心旺盛で怖れを知らず穢れのない純粋な気持ちを取り戻すことが唯一の路ではないのかと。
他のDBIC活動
他のDBICコラム
他のDBICケーススタディ
一覧へ戻る
一覧へ戻る
一覧へ戻る