【横塚裕志コラム】プロ人材「ITアーキテクト」の方と話しました ~プロ人材シリーズ⑤

ある企業グループのホールディングスとシステム会社に所属して、主に「エンタープライズ・アーキテクチャー(EA)」をデザインする仕事をされている方に、お話をうかがう機会をいただきました。
現在は、グループ各社を横断するAI基盤のデザインや、複数の新規事業会社のデジタル全般のサポートをしているそうです。新しい取り組みが増える中、グループの全体最適なアーキテクチャーをデザインするというテーマがますます重要になり、そして複雑で難しい課題になっているとのことです。また、新規事業を別会社にすることが増えているが、それはそれで経理決算からメールまで一通りのデジタル基盤をつくる必要があり、会社設立業務だけで忙殺されると嘆いておられました。
この方は、米国・中国での業務経験も長いので、日本と米国との比較をしながらお話をうかがうことができました。

1.仕事を進めるうえで日本企業の特徴

日本企業の社員の特徴は、「自分がどうしたいか、どう思うかの意見をしっかりもっていない」ことに尽きるという。自分の上司やその上の役員の意見がどうか、別の組織の役員のお考えがこうかもしれないとか、とにかく上の皆さんのお考えを推測しながら、皆さんがGOという内容に調整していこうと画策するので、なかなか結論がまとまらないようだ。ビジネス側の検討スタイルがこういう状況だと、一本芯が通った企画案にはならない。よって、あるべきアーキテクチャーをデザインすることができないと言う。

自分の意見を持つには、組織に流されない自立のマインドが重要ではないかと言う。米国では、個人として数年ごとに会社を変えてキャリアを積み上げ成長していくという経済的な自立のマインドが強い。ヨーロッパでは、自分や家族の幸福を最優先に考えるという立場での組織からの自立が強い。自立した個人の考えを持ち、それを仲間でぶつけ合いながら企画案を磨いていくというプロセスが欧米では普通だ。それによって「正しい」案がつくられると言う。日本は終身雇用に依存するマインドになりがちで、日本の社員の弱点はここにあるようだ。 自分の意見を持とうと思ったら、社外の専門性を持った方たちを回ってお考えを聞くとか、時には海外に出かけて調査するとか動き回るのが自然だが、社内にこもって忖度活動邁進では、創造的な案が出るわけがない。日本人の能力が全然発揮できていなくてもったいない、と嘆く。

2.「専門性を生かす」米国流をなぜ真似しないのか

市場の価値観の変化、技術の進化が激しい中、ビジネスの活動も複雑さ、不透明さを増している。故に今まで以上に専門性を育成し、専門性を生かしたビジネス活動が望まれると思うのだが、日本はまだまだゼネラリスト依存に留まっている。JOB型なども始まっているが、もっと米国流を真似してもいいのではないかと語る。その例が以下の二つだ。

  1. SEも専門性に分かれる米国を真似してはどうか
    米国でも20年前くらいは一律SEだった時もあるようだが、今は、PM、データベースビルダー、CXデザイナー、・・・・・と20種類くらいの専門性に分かれているようだ。IT産業、ソフトウエア産業では、米国が日本をはるかに上回っているのだから、もっと米国流を真似すべきではないだろうか。
  2. 経理・人事・法務はすべて専門性人材が所属する部門である米国
    これは米国では常識で、日本企業の「営業部門から人事部長でエリートコース」という話は皆びっくりするそうだ。人事部長って、専門性がなくてできるとは思えない。人事部は人材育成のプロ集団であるべき、というのが昔からの常識のようだ。教育心理学などのDrが人事部で働くのだ。
    人材のテーマとは離れるが、採用の履歴書に写真・性別・年齢がまだ日本では存在するが、米国流に倣って早く廃止したほうがいいのではないかとも語る。

3.CXはデザイナーの専門性とグループ全体最適の姿勢が必要

WEBの操作性は圧倒的に日本が米国に負けている。日本はきめ細かい品質を持つ国ではないか、との幻想があるが、実態は酷い状態だ。
理由は簡単で、業務別に異なるオーナーが「その場最適」で指示し、デザイナーの意見も聞かず、全体との整合性も見ないで開発してしまうからだ。このコラムでも、私はデジタル化することでお客様が離れているかもしれないと警鐘を鳴らしている。自分の会社のアプリをいくつかの種類を操作してみてはどうでしょうか。ストレスであきれること間違いない。

以上3点にわたって、ITアーキテクトから見る日本企業の実態をうかがった。趣旨は、なんとか日本企業をキャッチアップしたいとの想いだ。真摯に受け止めて次の活動につなげていきたいと私は思う。

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