ある企業グループのホールディングスとシステム会社に所属して、主に「エンタープライズ・アーキテクチャー(EA)」をデザインする仕事をされている方に、お話をうかがう機会をいただきました。 現在は、グループ各社を横断するAI基盤のデザインや、複数の新規事業会社のデジタル全般のサポートをしているそうです。新しい取り組みが増える中、グループの全体最適なアーキテクチャーをデザインするというテーマがますます重要になり、そして複雑で難しい課題になっているとのことです。また、新規事業を別会社にすることが増えているが、それはそれで経理決算からメールまで一通りのデジタル基盤をつくる必要があり、会社設立業務だけで忙殺されると嘆いておられました。 この方は、米国・中国での業務経験も長いので、日本と米国との比較をしながらお話をうかがうことができました。
日本企業の社員の特徴は、「自分がどうしたいか、どう思うかの意見をしっかりもっていない」ことに尽きるという。自分の上司やその上の役員の意見がどうか、別の組織の役員のお考えがこうかもしれないとか、とにかく上の皆さんのお考えを推測しながら、皆さんがGOという内容に調整していこうと画策するので、なかなか結論がまとまらないようだ。ビジネス側の検討スタイルがこういう状況だと、一本芯が通った企画案にはならない。よって、あるべきアーキテクチャーをデザインすることができないと言う。
自分の意見を持つには、組織に流されない自立のマインドが重要ではないかと言う。米国では、個人として数年ごとに会社を変えてキャリアを積み上げ成長していくという経済的な自立のマインドが強い。ヨーロッパでは、自分や家族の幸福を最優先に考えるという立場での組織からの自立が強い。自立した個人の考えを持ち、それを仲間でぶつけ合いながら企画案を磨いていくというプロセスが欧米では普通だ。それによって「正しい」案がつくられると言う。日本は終身雇用に依存するマインドになりがちで、日本の社員の弱点はここにあるようだ。 自分の意見を持とうと思ったら、社外の専門性を持った方たちを回ってお考えを聞くとか、時には海外に出かけて調査するとか動き回るのが自然だが、社内にこもって忖度活動邁進では、創造的な案が出るわけがない。日本人の能力が全然発揮できていなくてもったいない、と嘆く。
市場の価値観の変化、技術の進化が激しい中、ビジネスの活動も複雑さ、不透明さを増している。故に今まで以上に専門性を育成し、専門性を生かしたビジネス活動が望まれると思うのだが、日本はまだまだゼネラリスト依存に留まっている。JOB型なども始まっているが、もっと米国流を真似してもいいのではないかと語る。その例が以下の二つだ。
WEBの操作性は圧倒的に日本が米国に負けている。日本はきめ細かい品質を持つ国ではないか、との幻想があるが、実態は酷い状態だ。 理由は簡単で、業務別に異なるオーナーが「その場最適」で指示し、デザイナーの意見も聞かず、全体との整合性も見ないで開発してしまうからだ。このコラムでも、私はデジタル化することでお客様が離れているかもしれないと警鐘を鳴らしている。自分の会社のアプリをいくつかの種類を操作してみてはどうでしょうか。ストレスであきれること間違いない。
以上3点にわたって、ITアーキテクトから見る日本企業の実態をうかがった。趣旨は、なんとか日本企業をキャッチアップしたいとの想いだ。真摯に受け止めて次の活動につなげていきたいと私は思う。
他のDBIC活動
他のDBICコラム
他のDBICケーススタディ
一覧へ戻る
一覧へ戻る
一覧へ戻る