【レポート】企業変革実践シリーズ第32回「キャリア×イノベーション:多様性が求められる時代の変革ストーリー」

2024年6月21日、企業変革実践シリーズ第32回「キャリア×イノベーション:多様性が求められる時代の変革ストーリー」を開催しました。本シリーズは学びによる変容=LX(Learning Transformation)に関わる"生"の実践事例を当事者から共有してもらい、自らに必要なLXの在り方やその実現に向けた課題、アクションといった気づきを得るプログラムです。その中でも今回は、「多様性が求められる現代社会において、自らのキャリア形成・組織の変革、そして社会へのイノベーション創出をいかに結びつけるか」をテーマとし、JR東日本グループ 盛岡ターミナルビル 代表取締役社長の松澤さんにお越しいただきました。企画 兼 ファシリテーターは、JR東日本パーソナルサービス新井さん、富士通入社3年目の若手である内山(本稿執筆者)が務め、世代や組織、立場を超えて対談することで、そのヒントを探りました。

当日は ①キャリア ②パーソナル ③イノベーション という3つの大きなトピックで構成し、2時間のプログラムを配信しました。今回私は、トランスパーソナル短期集中プログラムで自己変容を体験し「学び」の重要性を再認識している今、自身のキャリアに向き合っていくうえでどう変革に取り組んでいったらいいのか、というテーマをもって松澤さんとの対談に臨みました。それぞれのトピックについて、対談中に感じたことも含めて順に記載します。

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まず最初に、松澤さんのこれまでの ①キャリア について取り上げました。人事や新規事業、出向など1つの業務をやり遂げるキャリアではなかったなかで、途中、JR東日本という会社において鉄道にかかわる業務が短いことがコンプレックスになることもあったそうです。そのようなとき、キャリアについて考える軸となったのは、ある方に言われた「仕事ではなく、自身に焦点をあてることだった」とコメントした松澤さんは「それぞれの企業がもつ専門性も多様化している現代、目の前にある仕事から選択していると、狭い視野の中でキャリアを歩むことになる」と意見を加えました。これは、自らで未来を描くことが求められる私たちにとって、常に自分自身に問い続けなければならない問いになると思います。目の前にある仕事から選択している、つまり見えている部分に捉われるのではなく、見えていない部分がたくさんあるという前提に立って、前に進み続けることが新たな気づきや行動へとつながる鍵になることを感じました。

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このようなキャリアを歩まれてきた松澤さんの ②パーソナル に迫っていくと、動き出すときのモチベーションの発端は「孤独」という言葉が浮かび上がってきました。松澤さんは「自分の根をつくるのは自分でしかない。そのときは一人で孤独な状態で、自分の覚悟を決めたことが動き出す源泉になる」とコメントし、自分の覚悟を決めた後の仲間との向き合い方についても教えてくれました。
たくさんの人に影響を与えてきた松澤さんにとって人との「関係性」とは、「誰かが勝ち抜ける関係性ではなく、1人1人が活躍し、支えあえる関係性」であり、「ビジネスのはじまりも相手のことを知ることだ」と定義されています。最初に組織やその他の関係者と「関係性」を築いておくことで、人間関係を原因にすることに逃げず、なぜこの仕事がうまくいかなかったかという根本的な原因に向き合うようにしてきたそうです。確かに、誰か自分と異質な人と交わり、対立した際、本質的な解決を横に置いて、対立している人のせいにする。そしてそのうち、対立するその人をどうにかしようという思考に走る方は多いのではないでしょうか。
このように、コミュニケーションには様々なコストがかかり、「関係性」を扱うことは難しいとされるなかで、松澤さんのように何にも代えられない「信頼(応援したいなどの感性によるもの)」と「信用(客観的に保証されるもの)」を築くことができた理由は、キャリアのパートからも見えてきた、ネガティブなこともプレッシャーもポジティブに扱う松澤さんのもつパーソナルに起因するものだと思いました。

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ここまでで見えてきた松澤さんのパーソナルが仕事(キャリア)に転換されたことで、 ③イノベーション の体現につながってきたと考えています。対談の中ではより具体的に、松澤さんの「言葉の伝え方」に組織におけるイノベーションのヒントを感じました。「経営者の発言は、文章で読むよりも深くて、迫力がある」という経営者としてのコメントもありましたが、それを聞く社員にとっては、言葉一つ一つが大きいので三者三様の意味付けがされていることが多いと思います。これに対して松澤さんは、「発言ひとつに対する意味付け」にこだわっているそうです。
特に、組織のイノベーションについては「変革」ではなく「進化」を伝える。これには、DXとも言われる現代においてデジタルはツールでしかなく、それぞれが積み上げてきた学び・本質・才能を活かして、もっと大きく、そしてみんなで「進化」として捉えていこうという意味が込められており、松澤さんの経営者として、より広く高い視点で考える会社に導くリーダーシップを感じました。

プログラムの最後には、「それぞれが持つ性格や仕事の癖は変わらない。変化することに馴染んでみるという発想へ変換してみるのはどうだろうか」というメッセージを参加者へ伝えたうえで、「学びこそ進化の源泉だ」という言葉で対談を締めくくりました。
今回の対談全体を通して、日々の学びの積み重ねによる個人の変容が、キャリア形成とイノベーションという大きな成果をうみだす循環になることを松澤さんの経験談から紐解くことができたと思います。私と同じテーマを抱えている方やそうでない方、またミドルマネジメント以上など私と違う立場の方にとっても、今回の対談内容が自らの行動を見直すきっかけ、且つ これから取り込むべきヒントを見出す機会になれば幸いです。最後に、当日の参加者より大変ポジティブなコメントをいただきましたので、一部ご紹介します。

  • 心に響く言葉をたくさん対談のなかからいただきました。物事の「なぜ」を伝えることで価値が伝わることが改めて勉強になりました。
  • 最初に決めたことを変えることも必要であるということに気づきました。立てた仮説は新しい情報が入ってきたら見直し、インプットしたものは覚えているうちにアウトプットする。そういった日々の積み重ねを実践してみようと思います。

(文責 富士通株式会社 内山 穂南)

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