【横塚裕志コラム】日本企業が「学ぶ」必要があることとは 何だろうか

「学びへの投資が不足していると言われるが、人事部が多くの研修を行っているし、資格取得の奨励金も出している。これ以上、何を学べと言うのか。」
「MBAに通ったり、資格を取得したところで、売上を増やす力になるのかわからない。勉強している時間があったら客先を回る方がいい。」
などなど、毎日忙しくしている企業人には「学び」は縁遠いようだ。このままでいいのだろうか。

私の意見は以下の通り。

1.「学び」の目的

日本企業の社員一人当たりの生産性は欧米に比較するとかなり低い。例えば、一人当たりGDPのOECDの中での順位はかなり低い。そしてそれに比例して給料も安い。
なぜ、低いのか、高めるためには何をすべきなのか、を「学ぶ」必要がある。
この30年、日本だけ上がっていないのだから。

2.「欧米」との比較で気になるところ

  • 北欧を中心に、残業無し・5週間の休暇を実現している。法律で規制されているのだから全企業が実施している。どうやって、それが実現できるのだろうか。
  • 医療・介護・教育などの現場でも、それが実現している。日本では長期休暇など無理と決めつけているようだが、どのように実現しているのだろうか。
  • それに比較して日本ではまだまだ残業も多い。人口減少により人手不足が続く状況では、今のままの仕事ぶりでは破綻する危険性がある。
  • 本社の人数が日本企業に比較して極端に少ないようだが、何が違っているだろうか。
  • 会社の組織図を比較してみたい。何が違うのか。会議が少ないようだが、どのようにして減らしたのか。意思決定の仕組みが違うのだろうか。
  • 経理部門、人事部門、ビジネスプロセス部門、調達部門、マーケティング部門、経営戦略部門、などなどはプロ人材が業務を行っているようだが、プロ人材の考え方と日本企業のゼネラリスト中心の考え方とで、何が違っているのか。
  • 「現場力」重視の日本経営と「全体最適」でマネジメントする欧米経営とは、本質的に何が違うのか。
  • 障がい者が能力を発揮し、男女の差がなく、個人が組織から自律している社会、日本とは本質的な考え方に大きな違いがあるように見えるが、それは何だろうか。
  • 大学が個人の育成に貢献し、産業界とのコラボで効果を上げているようだが、日本とは本質的に何が違っているのだろうか。

3.「学ぶ」べきは何かと言うと

上記の違いは体系的に整理されたものではないが、欧米と日本の経営方式が大きく異なっていることを示唆している。日本企業の経営方式が、この30年で欧米の企業の経営方式と大きく違った道を歩んでおり、日本企業独特の方式になっているように見える。というか、日本企業が昭和のままで固まっているうちに、欧米は大きく進化してしまっているようだ。
この大きく進化したであろう欧米の経営方式をあらためて「学び」、日本企業に取り込んでいかなくてならないと思う。それが、生産性の向上につながる早道ではないかと思う。少なくとも、生産性の大きな違いを放置しておいて、「学ぶことがない」とするのはあまりにも無責任だろう。

4.「経営方式」が違うと言われても何が違うのかわからない

何が違うのかを明確に私が説明することはできない。私もわかっていない。ただ、違いを感じていることはいくつかある。
例えば、「マネジメント」だ。「マネジメント」とは、業務を小さなタスクに分解し、スケジュールし、状況を可視化して、全員で共有化する。滞っているタスクがあれば誰かがカバーし助け合う。そしてその業務プロセスは常に組織的に改善を続け、誰が担当しても効率的に進む。日本の「管理」とは似てなくて全く非なるものだ。

このように本質的に日本と違う経営が欧米では行われていると推測できるので、その本質を学びに行く必要があると思うのだ。欧米では既に30年続いている方式だから、これをあえて体系立てて教えている機関はない。従って、実際の企業に行って肌で学ぶ作業を一定期間しなければ理解できないだろう。MBAに行けば一式教えてくれるというおいしい話はない。

5.具体的にどうすりゃいいのだろうか

誰かが助けてくれることはないだろう。そして、短期間に学びが終了することもないだろう。また、学んだだけでは意味がなく、自社で新方式を実践することがなければ学びにならない。学びたいとする強い意志がある企業が集まって、長期的な本格的な仕掛けを摸索するのだろうか。

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