デンマークで1年半ほどインターンとして働いて戻ってきた富士通の本多さんの帰朝報告イベントがDBICで行われた。 イベントの前に雑談で、「デンマークの生産性の高さ(日本企業の1.5倍)は、何が本質なのですか」とうかがった。本多さんの答えは、「一人一人が真剣に考えていること」だった。それを私として理解するために、いろいろ考えたので以下にそれを書こうと思う。
もともと民主主義は、エリートではないdemos(民衆)によるcracy(政治体制)を言い、話し合って議論して全員一致で決めていこうという制度。いろいろな意見をぶつけ合ったうえで、ベストな案をつくろうというもののようだ。だから、多くの国での国会審議は、最後は全員一致の案に収束するまで議論しているようだ。決して多数決に頼るようなことはしないようだ。 議論を重ねることに意味があり、多くの人がそれぞれの意見を言うことに意味がある。デンマークでも議論するときは長時間の議論に及ぶことも多いとのこと。
これも、多くの人の知恵を集めることが重要だから、民主主義であるべきだろう。民主主義というのは、実は民衆が自分の意見を持ち、それを発信することを前提としている。そういう状況が企業内で醸成されているかということが問題だ。 本多さんは「デンマークは日本と違って、一人一人が真剣に考えており、理由と賛成、反対を明確に主張する。それは、子どもの時から訓練されている。結果、議員の選挙では投票率が85%程度の高率だ。企業内でも活発な意見交換があることが、結果として効果が大きく、生産性が高い案を作っているのではないか。」と主張する。
日本の企業ではどうだろうか。上意下達の文化が根強く、また、忖度文化もあり、自分の意見を考える習慣がなくなり、自由闊達な議論が不足していることは否定できない事実ではないだろうか。 自分の今までを振りかえっても、議論を始めるとどっちが勝つかみたいな主導権争いになってしまい、お互いのいいとこどりの案を作ろうとする姿勢にはなっていなかったような気がする。また、社長が言っていると言われれば、それは従うしかないと思い、意見は考えないことが常だったように思う。役員会では、別の役員の政策に意見を言うと自分の政策のときに仕返しされるから、お互いに意見は言わないでおこうという暗黙のムードがあった。これでは、多くの人の知恵を集めることになっていないわけで、企業としては残念なことをしているということだろう。 私が社外取締役をしている海外の会社では、役員会では、平気で社長の政策を批判する人がいらっしゃる。社長も普通に議論する。これが、欧米の平均的な会社の姿なのだろうかと感じる。
このように欧米では、自分の判断軸を常に自分の頭で考え、平気で主張することができるのは、民主主義の原則がベースにあり、どっちが勝つか負けるかではなく、お互いの主張を出して最善の案を作っていこうとする思想に裏打ちされている感じがする。多数決ではない、最善案を目指そうとする思想の重要さを感じる。
組織は効率的に運営していくことが重要だ。それを追求し続けていると、「一人一人が真剣に考えること」が退化してしまうというジレンマに陥ってしまう。日本企業の多くがこの状態になっているように見える。二つの状態を感じる。
「一人一人が真剣に考えて」、自由に議論する企業に近づけていく職務・責任が全員にあると思う。多くの人がこれを「自分ごと」としてとらえ、自分らしく自分の考えを発信していく、そんな民主主義の企業に進化していけたらいいなあと思う。
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