【レポート】特別連続セミナー:デンマークデザインセンターからの帰朝報告

2024年7月24日、「特別連続セミナー:デンマーク・デザイン・センターからの帰朝報告」を開催しました。本シリーズはDDC(デンマーク・デザイン・センター)から得られた洞察や体験を共有することを目的としています。セミナーには、DBICの共同代表である西野 弘と、DDCでゲストリサーチャー期間を終えた本多達也さんの2名が登壇しました。

冒頭、西野は約5年前に確立されたDBICとDDCの協力関係を紹介しました。DDCは国立の研究機関として45年前にスカンジナビアデザインを推進するために設立され、時代の変化に伴い、伝統的なデザインの推進からより広範な社会変革・社会構造とシステムの再設計に焦点を移しました。現在、「ソーシャルイノベーションbyデザイン」を掲げ、デザインによる社会課題解決のモデルをリードしている代表的な組織となっています。 そして、デンマークはIMD世界競争力ランキング2年連続1位(2022年、2023年)で、世界競争力、デジタル力、幸福度満足度トップクラスの国です。

続いて、本多さんからDDCの紹介や学びに関する内容が展開されました。 本多さんは、音の大きさを振動や光に変換して音を感じるアクセサリー型装置「Ontenna」の開発者です。そしてDDCのゲストリサーチャーとして2022年からデンマークデザインセンターでインターンシップを行い、2024年4月に帰国しました。

DDCは共創を得意とし、3つのミッションを掲げています。デジタル仕組みへの移行、新たな社会構造への移行、持続可能な地球への移行を中心に取り組んでいます。 ミッション達成のため、様々なバックグラウンドの方々を一つにまとめていくための手法やバックキャスティング(理想の未来を描き、そこから逆算して考えていくことで新たな着想を得ていくこと)をワークショップ設計やファシリテーションを使って展開しています。本多さんは、それらについてプロジェクトを通して学び、デザイン思考の実践と新しい価値観の創造を体感しました。

また、DDCの学びの実践事例として、川崎市のプロジェクトの立ち上げについて紹介されました。 富士通と友好関係にある川崎市と富士通、そしてDDCとの共同プロジェクトです。内容は、川崎市の未来のウェルビーングを考えるものです。 DDCが得意とするバックキャスティング手法を用い、川崎市が力を入れる音楽とウェルビーングに注目し、音楽という要素を取り入れて、どうウェルビーングが考えられるかというワークショップを実施しました。多様な利害関係者とともに様々なアイディアが生み出されたワークショップとなったそうです。

更に、デンマークの文化や生活についても紹介されました。 本多さんのパートナーの出産に伴い、現地の医療体制や育児に関する考え方の違いに触れる機会となりました。注目すべきポイントは病院の施設です。子供達が遊べる工作スペースや図書館などが併設されており、入院中の方に限らず、街に住む人々も利用することができます。こうして、出会いのデザインの場の設計がさりげなく散りばめられているという気づきの共有がありました。 そしてデンマークでは、出産後3分後にマイナンバーカードが付与されます。デジタル先進国としての仕組みにハッとした瞬間だったといいます。

本多さんのプレゼンテーションの最後は、デンマークの底力ついて触れました。 一言で言うと、「一人一人がそれぞれの"違い"を受け入れ合い、自分らしく生きられる社会」だと本多さんは語りました。 デンマークにはろう学校がなく、耳が聞こえる人も聞こえない人も一緒に学んでいるそうです。障がいのある方もない方も、サポート等はあるものの、基本的には一緒に学び、暮らしているそうです。事例は街づくりにも波及し、ホームレスの方が再び人とのつながりを取り戻す街づくりの過程もシェアされました。

その後Q&Aセッションで締めくくられました。本多さんが約1.5年間にわたる滞在で学んだデンマークの"リアル"による気づきから、新たな着想や在り方をお伝えする会となりました。

参考

  • 川崎市のプロジェクト

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