企業が顧客との手続きをデジタル化することは普通になっている。しかし、その操作性が顧客にとって快適なものになっているかというと、煩雑だったり難しかったりして顧客にストレスをかけているケースが多い。これでは、デジタルにしたせいで顧客を失うことにもなりかねない。DXと声高に叫んでみても、顧客に喜んでいただけなければ無駄な投資になる。 そこで、私は「顧客起点デジタル」「企業論理デジタル」という言葉をつくった。デジタル化は「マーケティング」だけでなく、事務処理でも顧客との接点を持ち、実は顧客に対して大きな影響を与えている。だから、事務処理でも「顧客起点」の視点が重要だということを主張したいためだ。 「顧客起点デジタル」は実は簡単ではない。簡単ではない理由を分析しながら、「顧客起点デジタル」に進むためにはどうすればいいかを考えてみたい。
デジタル化は企業が行うので、普通にやっていると「企業論理デジタル」になってしまう。「企業論理デジタル」の典型例を以下に3つ示そう。
その結果、顧客はどう感じているか。
ほとんどの会社のデジタル化が、こんな感じの「企業論理デジタル」になっている可能性がある。これでは、顧客は逃げていくことになる。
上記の3つの事例すべて、デジタル化の「目的」が企業論理になっている。故に、WEBでの操作性だけを工夫しても顧客には理解されない可能性が高い。つまり、発注側の考えが企業論理に立っていることが問題を引き起こしているので、SEがそれをCXデザインなどでカバーすることはできない構造になっている。故に根が深い。 加えて、発注するビジネス部門は、自分たちの論理が正しいと考えているので、自分たちの問題で顧客が逃げていることに気がつかない。
「デジタル化」とは、オンライン化ではない。「デジタル化」とは、デジタル時代の新しい社会の中で、顧客起点ですべての手続きを根本的に考え直そう、ということだ。その事例を以下に示そう。
つまり、「デジタル化」とはアナログ時代のプロセスを白紙にして、顧客起点でプロセスを全面的に見直そう、ということだ。そのためには、アナログ時代に企業が決めたルールや慣習も含めて、白紙に戻したうえで、顧客起点を考えようというものだ。確か、音楽や本をオンライン販売に変えるとき、著作権などの既存のルールを見直すことで実現したように理解しているが、これも典型的な顧客起点だと思う。
まず、以下のような取り組みでは難しい。
「顧客起点デジタル」を構想・設計できるプロ人材を育成するしかないと思われる。そのプロ人材とは以下の能力を持つ人だ。
上記の能力を持つ人材は、まさにBA(ビジネスアナリスト)だ。「顧客起点デジタル」は今後も継続して企業のキーとなるテーマであり、BAの育成、設置は企業競争力を高めるという視点で、経営の責任で取り組むべき大きなテーマだ。欧米には、200万人が活躍しているのだから、日本企業も取り組むべきではないだろうか。
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