【横塚裕志コラム】「顧客起点デジタル」と「企業論理デジタル」 その⑦ ~ BAが経営上どうしても必要である理由 ~

前回までのシリーズ①から⑥で、デジタル投資が実際に効果を発揮しているかどうかについて、「顧客起点デジタル」になっているか否かの視点で検証してきた。
その結果、デジタル投資の効果を上げていくためには、ビジネスオーナーとSEに加え、第三者のビジネスアナリスト(BA)の役割が重要であるとの結論に達した。そこで、今回は欧米でのBAの捉え方を調査しつつ、BAの役割をより明確にしてみたい。

Ⅰ. 欧米での問題意識

米国やヨーロッパが、なぜBAの拡大・定着を進めてきたのか生成AIで調べる。

1. 米国

米国企業は、単なるIT投資だけでは競争力向上につながらないことを学び、組織・プロセス・ルール等の改革を含めた包括的なアプローチの必要性を認識しました。この認識がBAという職種の重要性を高め、その発展を促進したと推測できます。
具体的な必要性は以下の通り。

  1. ビジネスと技術の橋渡し役の必要性:BAは、ビジネス部門と技術部門の間のコミュニケーションを円滑にし、両者の要求を適切に翻訳・伝達する役割を果たします
  2. 効率的なプロセス改善:BAは、ビジネスプロセスを分析し、改善の機会を特定して、組織の効率と効果を向上させることができます
  3. データ駆動型意思決定の重要性:組織がデータに基づく意思決定を重視するようになり、BAがデータを分析し、洞察を提供する役割が重要になりました
  4. 複雑なプロジェクト管理:BAは、様々なステークホルダーと協力してプロジェクトの成功を確保し、要件の収集や文書化を行います
  5. 専門性の必要性:ビジネスアナリシスが専門的なスキルセットを必要とする分野として認識され、専門職としての地位を確立しました

2. ヨーロッパ

ヨーロッパでのBA定着の主な要因は以下の通りです。

  1. グローバル化への対応:ヨーロッパ企業が国際競争力を高める必要性から、効率的なビジネスプロセス改善とIT活用が求められました。
  2. EU統合の影響:EU域内での標準化や規制対応のため、ビジネスプロセスの分析と最適化が重要になりました。
  3. デジタルトランスフォーメーション:欧州企業のデジタル化推進に伴い、ビジネスとITの橋渡し役としてBAの需要が高まりました。

Ⅱ. BAの機能・役割

上記の通り、欧米でのBAの必要性を調査した。要すれば、デジタル投資の効果をしっかり獲得するために、システム開発と同時に業務改革を推進する必要があり、その業務改革の実践は専門性を必要とし、BAが定着した、と整理することができる。

これを踏まえて、日本におけるビジネスアナリストの役割を考えてみる。基本は、欧米での役割と同じだが、特に日本企業でのビジネス側の方々の弱点をカバーしていく意味を重視し、加えて、BA制度の導入しやすさを考慮すると、以下の通りの役割をまずは定義してはどうだろうか。

  1. 顧客起点のビジネスプロセスを企画する
    デジタル化の対象とする業務が顧客にとって価値あるものにするために、どのように改革すべきかを企画する。
    • 同様な業務がグローバルで先進的な企業で、どのようにデジタル化されているかをベンチマークする
    • 現行業務での顧客のペインを調査する
    • 企業の各部門の狙いとは別に、顧客起点での改革原案を企画する
    • 改革原案を実現するために、社内の各部門(商品開発、デリバリーチャネル、営業体制など)が取り組むべき課題を明確にする
  2. プロジェクトチームを提案する
    改革原案を実行するための社内体制を構築すべく、提案する。
    • 権限を持ったチームと、各部門での改革推進メンバーを決める
    • 新たなビジネスプロセスの構想を提案
    • 部門横断での顧客起点での世界観を共有するべく活動する
  3. 社内の縦割り部門同士のコミュニケーションを推進する役割を持つ
    縦割り部門同士の直接的なコミュニケーションが難しいので、BAが間に入って、互いの主張を引き出し、ファシリテートする。

Ⅲ. 日本、どうする

「顧客起点デジタル」を実行するためには、顧客起点での新しい商品やそのルールを構想し、それをデジタルで実装していく必要がある。それは、企業の縦割り各部門だけでは実行できない。顧客起点の世界観を主軸にして、縦割り各部門間のコミュニケーションを促し、全体をまとめていく機能が必要だ。それをBAが果たすことができれば、企業を顧客起点に変革することができる。「顧客起点デジタル」は、プロダクトアウトの世界観にどっぷりつかった日本企業を、顧客起点の企業に変身させる大きなトリガーになるべきだろう。もしかしたら、これこそが正真正銘のDXかもしれない。
日本企業の経営者は、まずは「顧客起点」の世界観を自分ごととして捉え、すぐにでも「顧客起点デジタル」実現を旗印にして、企業内にBAの機能を認知させ、BA人材の育成に取り掛かる必要があるのではないだろうか。

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