IT協会のイベント「デジタル業務改革」で、滋賀大学データサイエンス学部の河本教授がこう主張している。 「データドリブン経営に歩み出している企業(例えばキーエンスなど)のキーパーソンにインタビューした結果を総合すると、データドリブン経営を実行するために必要な能力は次の方程式で書ける。
「データドリブン経営」を実行する能力=[会社を良くしようとする意欲]×[問題解決能力]×[データ分析スキル]
つまり、データスキルだけ高めても「データドリブン経営」はできない。多くの企業がデータスキルだけに注目して、他の二つの能力が視野に入っていないから、新しい経営をつくることができていない。」
この主張に私は大きく共感している。データドリブン経営だけでなく、「変革」を実現する能力を明確に言い表していると思うからだ。つまり以下の通りだ。
「変革」能力=[会社を良くしようとする意欲]×[問題解決能力]×[各分野のスキル]
そこで、まずは第一の能力である「会社を良くしようとする意欲」について、日本企業の実態を考えてみたい。河本教授がご心配されているように、この能力はかなり低い状況にあると私も感じている。
日本人と欧米人とを比較すると「個人的な意欲」が日本人は少ない傾向にある。だから、このポイントを意識して強化していかないとこの能力は育たない。 日本人の特徴を示すいい事例をご紹介する。 米国のMBAに日本企業から派遣された方々5人が語っている。「MBAの同僚の欧米人は、全員卒業後にやりたいことを持っている。しかし、われわれ日本人は、帰ってから何をするのかと聞かれても「部長になりたい」ということくらいしか言えない。ここが全然違う。」という記事だ。
その傾向は、ChatGPTに聞いても同様の答えが返ってくる。
・・・・・ 日本人の特徴は以下の通り。 集団志向: 日本の文化では、個人の自己認識よりも集団との調和が大切にされます。そのため、自己認識を高めるプロセスにおいても「自分がどう思うか」よりも「周囲にどう映るか」や「チームや会社の目標にどのように貢献するか」が重視されることが多いです。 欧米人の特徴: 個人主義志向: 欧米文化では、個人としての特性や独自性を強調する傾向があり、自己認識のプロセスでも「自分らしさ」を重要視します。自己理解が深まることで、個人としての目標や夢を追求することが奨励され、自己実現の概念が大切にされます。 ・・・・・
この違いは、「特徴」の違いであって、どちらかの優劣を決めつけているわけではないが、この特徴の違いをしっかり認識しておくことが重要だ。
この「意欲」とは、「問題を「自分ごと」と捉え、変革に向けて行動する意欲」と定義してみると、こういう変革意欲を持っている人はほとんど見受けられない。 具体的に、顕在化している事例を挙げてみよう。
以上の二つの事例が示しているように、この「意欲」の問題は日本企業にとって大変大きな課題だと認識すべきと私は考える。なぜなら、日本企業を復活させるための「変革」は、人材に「意欲」がなければ始まらないと思うからだ。「リスキル」とか「人的資本」とか「パーパス」とか言う前に、「意欲」がなければ何も始まらない。
意欲の醸成には、個人の意欲の問題と企業文化やマネジメントなど企業側の問題とがあるとは思う。その要因の中では、私はやはり「個人の意欲」の問題が80%を占めているのではないかと感じている。会社が一定程度の環境を整備しても、個人が何をしたいかを持たないようでは何も始まらない感じがしているからだ。そこで、次回は、そこに焦点を絞って深堀してみたい。
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