近頃、有力企業の社員削減のニュースが目につく。パナソニックHD:1万人、資生堂ジャパン:1,500人、オムロン:2,000人、ワコール:150人、リコー:2,000人、第一生命:1,000人などだ。日本においては、雇用に手を付けざるを得ないということは、かなり深刻な事態なんだろうと推測される。
一方、その原因となっている経営の問題に、少しでも「デジタル」が役割を発揮してきたのだろうか、と不安を覚える。真の経営課題とは別のところでデジタルが使われているとしたら、それは大変残念なことだし、デジタルの本領が生かされていないのはもったいない。
しかし、経営課題にデジタルが貢献できるかどうかというテーマは奥が深い。
デジタルは「ITツール」だと認識していると、現状プロセスの一部をデジタルに置き換える程度で留まり、収益の改善まではいかない。デジタルは「構造改革を構想するプラットフォーム」だと認識すれば、経営課題そのものに挑戦することができる。経営者やCIO、そして経営課題に取り組むビジネスのエースたちが、どちらのセンスでデジタルを認識しているかが大きな分かれ道になる。もちろん、デジタルだけで問題が解決することは少ないが、デジタルを活用するというレベルには意外と会社によって大きな差があるように思う。そこで、経営に貢献するスキームとして、デジタル化が構造改革を構想するプラットフォームだということを書くこととしたい。
私がこれを主張する意図は以下の通りだ。
次に、あえて「デジタルを使って」とデジタルを強調する趣旨を説明する。
デジタルを使って構造改革を構想すると、必ず、ビジネスプロセスの改革をどのようにするかの議論になる。顧客とのプロセスをオンライン化する、とか、デリバリーチェーンの構造をどうするか、などなど。
この議論は、「この組織にとって本当に大切な価値とは何か」「何を守り、何を変えるべきなのか」という、極めて本質的な問いへの答えを見出すプロセスとなる。
例えば、こんな議論が想定される。
この構想フェーズにこそ、組織の文化、働く人々の感情、現場で積み重ねてきた知恵や経験が凝縮される。そうした「見えにくい資産」を丁寧にすくい上げ、未来にどうつなげるかを描く作業から本当に意味のある構想が生まれる。
構想チームには、必ずデジタル担当、すなわちBAかシニアSEを入れ、役員レベルの議論にはCIOもしくはCDOを入れるべきだ。その理由は、デジタル担当が以下の仕事をすることで、本質的な議論になるからだ。
デジタルは、構想を決めてからソフト開発を委託するものではなく、構想を練るときに一緒に考えてくれる存在だと認識するべきなのだ。
「デジタルを使って構造改革する」という構想フェーズそのものに価値がある。組織の中で、「何のためにこの業務があるのか」「誰にとって、どんな価値を生み出しているのか」といった問いを交わすことは、単なる施策立案を超えて、組織の学びや関係性の質を高める機会となる。現場の声を聞き、経営の視点と擦り合わせながら方向性を定めていく中で、「自分たちの仕事の意味」が再確認される。そのプロセスこそが、人と組織を動かす力になる。
デジタル化は、その問いに真正面から取り組むための契機となる。デジタルを経営改革にぜひ使っていただきたい。
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