まずは第1回への参加者からのアンケートを通して寄せられた疑問点に対して、講師・ファシリテーターを務める各務太郎様からフィードバックがありました。 各務太郎様 例えば本プログラムのテーマである「スペキュラティブデザイン」と、従来型の「バックキャスト型思考」の違いについて。バックキャスト型思考は、「未来から逆算して発想する」という点ではスペキュラティブデザインとよく似ています。一方で、前者が「現在の状況から予想される未来」使うのに対して、後者は「こういう未来になってほしいという願望」を起点にする点が決定的に異なります。 こようにスペキュラティブデザインにおいては「自らの願望」から発想することで、客観的なユーザー調査やマーケティングからは出てこない、新しい発想を生み出すことが可能になります。この点も、前回の講義のポイントでもあった「スペキュラティブデザインが0から1のイノベーションに向いている」ことの根拠となります。 他にも「デザインシンキングは1を10にする改善に向いているというが、0から1のイノベーションにも使えるのではないか?」という疑問も寄せられました。各務様は「デザインシンキングの最初のプロセスであるユーザー観察は、既存の世界をベースに行われるため、その時点で1を前提に改善のプロセスになっている」と指摘します。 道行く人を観察したところ段差に躓く人が多く見つかったので路面を平坦にする、というプロセスは「新しいインサイトの発見」ですが、一方で既存の道路を前提にした「改善の提案」でもあるというわけです。 プログラム参加者によるコピー開発ワークショップの模様 講義の後半はコピーライティングの手法がテーマです。電通でコピーライターの経歴もお持ちの各務様からは「(ユーザーに)アクションを起こさせるためのシフトが、コピーである」という定義がなされます。厳密には、既に売れている商品の世界観づくりである「ブランディング(共感)」を目的としたコピーも存在しますが、ここでは「シフト(発見)」を目的としたコピーを学びます。 プログラム参加者によるコピー開発ワークショップの模様 その際に最初に取り組むべき最重要課題は「What to say」です。コピーはどうしても「うまいことを言う」曲芸のようなものだと思われがちですが、膨大にある商品のセールスポイントのうち「何に絞って言うか」の選択こそが、コピーライティングの最重要プロセスになります。 例えばリンゴを題材にしたとき、「赤い」「甘い」「丸い」といった訴求は、競合となるリンゴが多く、レッドオーシャンと化した分野です。一方で、もしリンゴに対して「肌に良い」という新しい価値を見出して訴求しようとすれば、競合は「化粧品」になります。化粧品という分野でリンゴとして戦うことができれば、自分だけのブルーオーシャン市場を生み出せることにつながるわけです。 プログラム参加者によるコピー開発ワークショップの模様 このように効果的な「What to say」を生み出すことができたら、その後に初めて「How to say」に進むことができます。ここで、各務様ご自身が過去30年分の「コピー年鑑」を独自に分析し、54パターンに分類した「型」をご紹介いただきました。コピー開発のプロセスとしては、「What to say」をこの型に当てはめて、具体的な表現を模索していきます。 コピーライティングは「うまいことを言うポエムを思いつく芸」ではなく、商品を差別化するための訴求ポイントを客観的に分析し、それを「型」に当てはめて具体化するという、論理的なプロセスであることを参加者が学ぶプログラムになりました。 本プログラムの企画を担当された早稲田大学WASEDA NEO プログラム・プロデューサーの高橋龍征様 次回、基礎編第3回ではビジョナリーワードのつくりかたについて講義予定です。
「未来のシナリオを創る、人を動かす方法論」(各務太郎)
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