【横塚裕志コラム】デンマークからの本多さんのレポート 第2回

1月11日に報告イベントがあった。DBIC共同代表の西野さんから本多さんに突然の質問。「本多さんがデンマークで暮らしていて驚いたことを3つ教えてください。」以下、本多さんのお答えを紹介しながら、私の感想をコメントする。

  1. 保育園も17時に閉まる
    とにかく残業はしない構造になっている。そういう社会構造の中で、皆が効率的に働いている。休みもしっかりとる。DDCは、12月15日のクリスマスパーティで休みに入り、1月11日くらいから新年の仕事が始まる。

    (私のコメント)
    働く権利、残業しない権利、休暇は6週間取る権利、体調が悪ければ休む権利、などがはっきりしている。一つの人権として保証されているように思える。そして、それを実現するために、効率的なプロセスを常に追求している。マイナンバーカードを病院に持っていけば、それだけで診察を受けられ、近くの薬局で薬が受け取れる。すべて無料だ。過去の治療記録や診断記録も統合されて閲覧できるそうだ。
    日本企業で働くママさんの嘆きを聞いたことがある。「幼児なので時短をしているが、休日出勤を命じられている。どういうこと。」働く人の人権がまだまだの日本がつらい。
  2. 夕食でも買い物でも税金が高い
    消費税が25%なので、高く感じる。

    (西野さんのコメント)
    確かに消費税は日本の10%に比較すると高いが、一方で、学費は大学院まで無料で教科書や給食まですべて無料、子供手当てがあり、大学生もお金が支給される。医療・介護がすべて無料、年金も充分に支払われる。日本では、税金のほかに介護保険料や健康保険料などを支払い、医療も介護も自己負担があるなど、実質はデンマークの方が暮らしやすい状況になっている。

    (私のコメント)
    西野さんから説明をいただいたので、税金の高さは自己負担とのバランスで考えるべき問題なのだと理解が進んだ。その問題はさておき、自分が日本の税金・社会保険料スキームについてほとんど知らないことに気がついた。私たち国民は、所得税や消費税、社会保険料などかなりの高額を支払っているわけだから、もっと私たちが使い先などに関心を持ち、意見を言い議論する機会があるべきなのかもしれない。国民の監視がないまま、政治家(政治屋)や行政任せになっていること自体、大きな問題なのかもしれない。
  3. 投票率が86%
    国会議員や市会議員選挙の投票率が86%と高い。

    (私のコメント)
    デンマーク人は、とにかく「自分ごと」の範囲が広いという印象を持つ。自分の家族、自分の仕事を超えて、行政や政治の分野までも自分の考えを持ち、行動していくというスタンス、マインドに日本との大きな違いを感じる。 日本企業の社員の方々を見ていると、自分の担当範囲、あるいは自分のチームの範囲しか見ていない。それ以外は、自分ごとではないという人が多いように思える。従って、自分ごとの範囲を超えた「自分の会社」という視点になると、自分の意見を持つという意欲さえ失っているように見える。となれば、自分の業界をなんとしようとか、日本の仕組みが問題だというマインドにはほとんどならない。
    本多さんのこのイベントも、オンテナという障がい者向けの製品だとか、デンマークに行ったことがある、という狭さでの参加動機が多いのも気になるところだ。デンマークの競争力の強さの秘訣を学びたいという動機が少ないのは残念なところだ。

「自分ごと」の範囲の広さが人の器の大きさと同じだと気がついた。そして、私の感覚だが、「自分ごと」が広くないとモノを俯瞰してみることができないのだろうと思われる。つまり、俯瞰してみる力はスキルではなく、マインドの問題だろう。俯瞰できないと物事の本質は見えてこないので、創造性は生まれない。そういう関係性にあるように思える。
それでは、「自分ごと」を広げるためにはどうすればいいのだろうか。それは、まさに「自分の問題」。あなた自身が取り組むこと。私自身の課題だ。

参考

【イベント案内】特別連続セミナー:デンマークデザインセンターからの現地レポート 第2回 開催

他のDBIC活動

他のDBICコラム

他のDBICケーススタディ

一覧へ戻る

一覧へ戻る

一覧へ戻る

このお知らせをシェアする