【レポート】メディア説明会:日本企業のDX成功のためにDBICができること

2016年5月にDBICが日本企業のイノベーションプラットフォームとして活動を始めてから3年間が経過しました。その間、スイスのビジネススクールIMDとの提携プログラムを強化したり、2018年からはメンバー企業の社員がシンガポールに5ヶ月間滞在するアクセラレーションプログラムを開催するなど、DBICは年々進化を続けています。 DBIC副代表の西野弘(左)と代表の横塚裕志(右) 2019年にDBICは新たに「ソーシャルイノベーション」をテーマに加え、日本国内の社会課題解決を掲げた独自プロジェクトを開始する一方、スイスやデンマークといったヨーロッパの中堅諸国における社会課題への対応を学ぶプログラムも開催します。 本レポートでは、このようなDBICの活動に関するプレゼンテーションを受けた記者の皆様との質疑応答を中心に、内容を再構成してお届けします。

シンガポールで明確になった日本企業の課題

記者:2018年に開催されたシンガポールイノベーションプロジェクトの結果について「成功」と見ていますか? 帰国後に実際にイノベーションにまで進んだ事例は出ているのでしょうか? 西野:初年度として、プログラム参加者側と送り出したメンバー企業側、それぞれの課題が明確になったという意味で成功したと考えています。 まず、参加者は30代が中心でしたが、自分の所属している企業のブランドや自分が日頃担当している業務の改善から離れられず、ひとりの生活者として社会課題を発見することが難しいという課題が明確になりました。 ですから、2年目となる今年は、まず1ヶ月は日本で社会課題やマインドセット変革のプログラムを受講、次の1ヶ月はマレーシアに語学留学、3ヶ月目にやっとシンガポールでイノベーションに取り組むような改善を行っています。 また、昨年の参加者が帰国して自社に戻ってイノベーションを進めようとした時に、社内でストップがかかってしまうことがありました。参加者当人は真剣ですし、トップの理解が得られたとしても、中間管理層が粘土質のように固くてプロジェクトが進まないという状況に陥りがちです。 横塚:そんな中でも、シンガポールで芽生えたプロジェクトを社内で育てているメンバー企業もあります。シンガポール現地で出会ったスタートアップとパートナーシップを結んだ事例もあります。 ただ、中間管理層の問題はやはり根深く、今年の春には人事部門に向けたDBICとIMDの共催プログラムを開催し、意識を高めるようにしています。

トップダウン型イノベーションの重要性と課題

記者:そういった話を聞くと、やはり経営トップが危機感を持って会社全体に対して大号令をかけないと、日本企業のイノベーションは進まないのではないでしょうか? 横塚:DX研究の世界的なリーダーのひとりであるマイケル・ウェイドIMD教授から言われたのですが、イノベーションや新規事業において最も難しいのは「最初にどういうテーマ設定をするか」という部分です。 その際「自社の売上や利益率を何年で何パーセント上げる」というのではなく、「自社が社会に対してどういう新しい価値を提供して生き残っていくか」というビジョンが必要になります。これは経営者でないと決められないことです。 ところが、日本企業でこういったビジョンを打ち出せている例はとても少ない。深刻な問題だと受け止めています。 西野:コニカミノルタの山名昌衛社長は、設立前から熱心にDBICをサポートしてくださっているメンバーの中のひとりです。 設立準備委員会を結成するためのイベントを開催した際、山名社長が自分の言葉で40分間にわたるスピーチをして頂いたことが功を奏し、出席していた企業の社長や役員の多くがその場で委員会への参加を決めてくれました。 コニカミノルタは、実際に従来のカメラ事業やフィルム事業を廃止し新しいビジネスモデルへの転換を成功させていますから、説得力が違いました。その山名社長でも、中間管理層を動かすのに苦心されていると聞いています。

イノベーションの進行が早い会社と遅い会社はどう違う?

記者:中間管理層を動かしていくためには、DBICの活動を通して、メンバー企業のイノベーション成功事例が出てくることが有効なのではないでしょうか? また、もし既に事例があるとしたら、成功が早い企業と遅い企業の違いはどこにあるのでしょうか? 横塚:5〜6社ほどで成果が生まれつつあります。違いは経営層の危機感とコミットメントですね。本当に「このままでは会社が潰れる」と思ったら真剣になります。 西野:やはり現時点で利益が大きく出ている企業は危機感が出にくいです。一方で、DBICにはJALとANAの両社が参加しています。 これは2社で競合する以前に、航空業界全体に対する危機感を共有しているからです。争っている場合ではない、と。

世界のイノベーション状況から見えてくること

記者:海外におけるDXは「企業が生き残るため」の手法だと認識していますが、日本の大企業は現時点では利益が出てしまっているのでそれが目的にならず、DXが進まないということでしょうか? 横塚:ウェイド教授が作年来日した際に、DBICメンバー企業の経営層とディスカッションを行ないましたが、彼の最初のメッセージは「DX is not about digital」というものでした。DXは企業が生き残るための組織改革であって、会社全体で行うものだからCIOやCTOに委ねてはいけない、というのが彼の主張です。 また、彼は世界で見ても95%の企業ではDXに失敗していると言っていました。DXに取り組み、悩んでいるのは日本だけではないのです。 西野:DBICでは日本企業がGAFAに代表されるシリコンバレーをモデルにしてもDXは成功しないと考えています。 もちろん彼らの新しいテクノロジーやビジネルモデルを学ぶことは重要ですが、彼らはデジタル時代に生まれたデジタルネイティブな企業ですから、長い歴史のある日本企業が模倣しようと思っても不可能だからです。 それよりも、日本と同様に長い歴史を持つヨーロッパ企業のDXへの取り組みを学ぶほうが有効です。2019年のプログラムでスイスとデンマークへの探索ミッションを取り入れたのはそういう理由です。

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